月次データを見ていれば予想がついた「低迷継続」
前回からの続きです。もっとも、業績が減益とわかったころまでには、株価が売られすぎと判断されたようで、しばらくはやや戻り歩調となります。
この辺りも業績だけを見ていたら、何で悪い業績が出て株価が上がったかさっぱりわからないと思います。その後、震災で株価は大きく下がりましたが、こればかりは読みようがなく仕方のないことです。
しかし、他の銘柄はそんなに時間をかけずに震災で下がった分を取り戻すのですが、同社株は下がった分がほとんど戻りませんでした。このことから、株価の弱さが実感できます。
そして、通期決算が発表されました。通期は25.4%増収、1.3%営業減益と厳しいものでした。当初計画は28.7%増収、11.1%営業増益ですから大幅な減額修正ということになります。最後の四半期である第4四半期だけとれば、17.6%増収、19.6%営業減益とよりいっそう厳しいものだったのです。
この背景にあるのが、2011年5月までの月次の低迷継続です。その辺りを【図表】の月次の図でしっかりと確認してください。ここまでの解説から同社の場合、業績なんか見ていても、まったく投資に役立たないことがわかります。いかに、月次データが重要かということが十分に理解できたのではないでしょうか。
株価上昇直前の「買い」の判断のタイミングとは?
極論すれば、月次データを公表している会社の場合には、月次を見ないくらいなら、その会社には投資をすべきではないとさえ言えます。それならば、むしろ月次データを公表していない会社に絞って投資すべきです。
でも、あなたはもう、月次データの活用法を知ったわけですから、月次データを活用しないなんてことはあり得ないでしょう。今回の説明は、月次データを用いた「売り」から入ったわけですが、もちろん「買い」でも有効です。
2011年5月まで低迷していた同社の月次が2011年6月に急に大幅なプラスに転じます。【図表】のグラフのBの部分になります。2011年7月初旬に公表された6月の月次は一気にそれまでの最高の伸び率であったため、ここで「買い」と判断したわけですが、その後株価は本格的な上昇を開始しました。
この時点でも月次を見ていれば、一足早く回復の判断ができて安いところで投資できたのですが、業績だけしか見ていなければ、その時点でわかっている2011年3月期の最後の四半期はすでに述べたように、17.6%増収、19.6%営業減益というものですから、なかなか株を買える状況にはありません。
ただし、6月の月次が出た時点は一つのベストタイミングでしたが、この時は、8月に第1四半期決算が公表されてからでも、間に合っています。それは、第1四半期決算が、25.3%増収、36.0%営業増益ときわめて良かったためです。
もっともその間に株価は10%ほど上昇していますから、月次をフォローすることの方が、業績だけを見ているより有利と言えるでしょう。決して月次なんか見ても意味がない、という結論にはなりません。
【図表】