2.目標達成以外の事柄に意識が向いている
「メンバー自身が自力で目標達成できるイメージを持てていない」場合の2つの解決策は、メンバー自身が目標を達成したいと思っていることが前提です。しかし、部下が「目標達成以外の事柄に意識が向いてしまっている」意識状態になっていることもあります。原因は大きく3つ考えられるでしょう。
<原因とそれぞれの解決策>目標達成以外の事柄に意識が向いてしまうケース
■目標を達成しようという意識になっていない
目標未達だからといって「あのメンバーはやる気がない」と決めつけるのは早計です。なぜなら、メンバーにやる気があるかどうかは上司側の主観によるところが大きいからです。
では、やる気があるのかないのかを客観的に判断するにはどうしたらよいでしょうか。それは、先ほどの「より近い目標設定(マイルストーンの設定、KPIの設定)」を思い切ってものすごく手前にしてみることです。たとえば、「今日は5件架電する」といったレベルの目標を設定してみましょう。ものすごく手前の設定にすると、もはやその目標には難易度がないはずです。
極論ですが、敬語やビジネスマナーがおぼつかない小学生でも5件架電する行為そのものはやろうと思えばできます。この簡単な目標さえもクリアできないのであれば、そのメンバーにはそもそもやる気がない、目標を達成しようという意識になっていないと判断せざるを得ません。
<解決策>
この状態は「会社や上司の指示を聞くか聞かないかは自分で決められる」と思っている意識状態ですので、まずはルール順守の指摘や報告回数を増やすことで上司と部下の関係性を構築し直す必要があります。
■達成すべき目標だと認識できていない
目標が複数設定されているといったように責任範囲が曖昧だと、目標があってもそれを達成すべきだという意識になりません。
たとえばマーケティング部において、メインの目標とは別に「次回のキャンペーンで10件新規顧客を獲得」といった目標があるものの、クロージングを行うのは営業部というような場合です。
ルールや責任が曖昧なままだと、メンバーの意識上「それって本当に自分(たち)の仕事なのだろうか」という疑いを持ったまま仕事に臨んでしまい、「絶対達成しよう、そのためにこうしよう」という意識にならないでしょう。
<解決策>
こういうときは「一定の基準(ルール)を満たしたリードを営業部にO件供給する」というように、マーケティング部の責任範囲にてコントロール可能な領域の目標を引き直し、「成約件数は営業部の目標、責任範囲にする」などの対応が必要です。
■達成できなくても仕方がないという意識になっている
忙しい、人が足りない、商品・サービスに不具合がある、競合の攻勢が増しているなど、部下の意識のなかで言い訳が残っている状態だと、目標達成に向けて集中力を発揮することができません。そして、目標が未達で終わったとき、そこに自ら克服するべき課題があるとも思えないのです。
言い訳のなかには上司から見てももっともらしい内容が含まれていることもあるでしょう。だからといって、「確かにそれは未達でもしょうがなかったですね」と声をかけては駄目です。この優しさが、部下が未達の部分を自ら克服するべき対象として認識できない意識状態をより強化させてしまいます。
そのため、言い訳は未達という結果が出てから聞くのではなく、目標に向けて動き始める前にすべて出してもらいましょう。事前に言い訳の意識を取り除いてあげるのは上司の大切な役割といえます。
ここで注意すべきは、「言い訳をするな」というメッセージを発し続けると、達成できなくても仕方がないという意識が大きくなってしまうことです。
<解決策>
部下からすると「目標達成に向けて本当に困っている障害があるのに、どうせこの上司にはなにをいっても無駄だ」という考えを固定化させてしまうからです。「言い訳はしっかり出してもらう。ただし、事前に」です。
こうすれば、上司が認識できていなかった業務遂行上の障害を発見することもできます。部下から正しい情報が上がってこないと、上司は正しい意思決定ができません。部下の意識を変えるのは部下自身であり、上司ができるのはそのための環境設定です。
無理やり部下の意識を変えようと感情的に圧力をかけたり、評価以外の罰を与えたり、評価以外のモチベーションを与えたりするマネジメントは逆効果か、効果があってもその場しのぎのものにとどまります。部下がその組織に所属したいと思っている以上、目標未達が続こうが、決して成長を諦めないでください。
奥田 拓之
株式会社識学
営業1部 係長/シニアコンサルタント
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