(写真はイメージです/PIXTA)

FRBによる金融引き締めの「副作用」がでてきています。そのひとつが、総資産2,090億ドル(約28兆円)を有するシリコンバレー銀行(SVB)の破綻です。多くの投資家が金融危機を懸念するなか、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は「これが米国株高の起点になる可能性がある」といいます。その根拠とは……詳しくみていきましょう。

いま起きていることを整理すると、いずれも株高要因

このように、利上げ→総需要抑制・景気減速→求人減・資金需要減→賃金上昇率下落→金利下落という、FRBの想定したマクロ経済のトランスミッションメカニズムが働かないまま、政策のゴールが実現できている、という「不思議」が起きている。

 

ならば、なんのための利上げなのだろうか。利上げの副作用が顕在化し、政策の目標が利上げ以外の経路で実現されているとすれば、もはや利上げは必要ない、ということになる。

 

結論は、一時的供給制約の下で起きたインフレは、供給サイドの改善で沈静化しつつあり、総需要の抑制は必要なかった、と言えるのである。

 

この「不思議」の背景には、自然失業率(≒NAIRU)の低下と自然利子率の低下、というコロナ禍前からの長期トレンドが持続していると考えるほかないのではないだろうか。

 

自然失業率、自然利子率の低下は技術進化(=供給力の上昇)によってもたらされており、放置されればデフレと成長率の低下を引き起こす、と考えられる。

 

これは日本病(Japanification)そのものであり、米国経済は依然としてデフレのリスクをはらんでいる、とも考えられる。

 

その関係を図表9で考えていただきたい。

 

[図表9]新産業革命=生産性・供給力上昇がデフレと低金利の根本原因
[図表9]新産業革命=生産性・供給力上昇がデフレと低金利の根本原因

 

よって余剰(Slack)を稼働させる適切な需要創造政策の対応が望まれ、その下ではリスク資産の上昇が期待できる、と考えられるのだ。

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年3月6日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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