いま起きていることを整理すると、いずれも株高要因
このように、利上げ→総需要抑制・景気減速→求人減・資金需要減→賃金上昇率下落→金利下落という、FRBの想定したマクロ経済のトランスミッションメカニズムが働かないまま、政策のゴールが実現できている、という「不思議」が起きている。
ならば、なんのための利上げなのだろうか。利上げの副作用が顕在化し、政策の目標が利上げ以外の経路で実現されているとすれば、もはや利上げは必要ない、ということになる。
結論は、一時的供給制約の下で起きたインフレは、供給サイドの改善で沈静化しつつあり、総需要の抑制は必要なかった、と言えるのである。
この「不思議」の背景には、自然失業率(≒NAIRU)の低下と自然利子率の低下、というコロナ禍前からの長期トレンドが持続していると考えるほかないのではないだろうか。
自然失業率、自然利子率の低下は技術進化(=供給力の上昇)によってもたらされており、放置されればデフレと成長率の低下を引き起こす、と考えられる。
これは日本病(Japanification)そのものであり、米国経済は依然としてデフレのリスクをはらんでいる、とも考えられる。
その関係を図表9で考えていただきたい。
よって余剰(Slack)を稼働させる適切な需要創造政策の対応が望まれ、その下ではリスク資産の上昇が期待できる、と考えられるのだ。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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