“検討使”と揶揄も…「歴史的転換」進める岸田政権
聞く力をモットーにした岸田首相だが、その出だしはちぐはぐさが目立ち、“検討使”と揶揄されるなど実行力も疑われた。
アベノミクスを継承した菅元首相の成長重視政策に対抗し、新しい資本主義を掲げ、分配重視へと舵を切り、就任早々に金融資産所得課税強化を打ち出した。これに対し、株式市場は直前の高値からほぼ3,000ポイント、1割の急落となるなど、容赦ない洗礼を浴びせた。
しかしここ1年半の岸田政権の展開は、いい意味で予想を裏切り、当然とはいえ数々の懸案を片づけている。閣僚不祥事による辞任、統一教会問題の紛糾、支持率低下、など表面的にはぱっとしないが、時代を画する政策を次々に打ち出していることも正当に評価するべきであろう。
最も大きいものは、安全保障3文書の策定であろう。長らく日本の平和主義の根幹にあった専守防衛を打ち切り、敵基地攻撃能力に踏み込む歴史的転換を果たした。
また防衛費のGDP比2%への目途をつけ、防衛装備品、武器輸出解禁に対して第1歩を踏み出した。さらにエネルギー自給の向上を目指して、多くの反対を押し切り原発の再稼働促進と新規増設の検討、耐用年数の60年への延長、新たな原発技術の開発なども打ち出した。
経済安全保障の柱である半導体産業育成にも一段と注力、菅政権時に打ち出された半導体産業推進は加速し1兆円プロジェクトのTSMC熊本工場第1期に次いで第2期工場が具体化している。また最先端半導体国策企業「ラピタス」の創生と5兆円と言われる巨額投資プラン始動(日経報道)など、目を見張る変化が引き起こされている。
首相は憲法改正に向けた意欲を強調、「時代は憲法の早期改正を求めていると感じている。野党の力も借り、国会の議論を一層積極的に行う」と主張している。出身母体の宏池会の持説であった平和主義の根本的転換に舵を切った。
岸田政権の「不思議な強さ」
この岸田首相の転換を、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は以下のように評論している。
「岸田氏の安保3文書の決定は、安倍元総理が主張してきたこと。だが、安倍氏の主張がどれだけ正しくても、朝日新聞を筆頭にメディアは安倍氏の正論を叩きに叩いた。岸田氏にはメディアによる非難がない。この点こそ岸田氏の強さである。不思議な強さだ。岸田氏はそれを政策推進の力に転化できるだろう」(週刊新潮2022年12月29日)
ロシアによるウクライナ侵略、中国習近平政権の独裁化と米中対立などの現実は、戦後の空想的平和主義の限界を否応なく見せつけた。ソフトな岸田氏は頑迷な空想的平和主義者のスタンス転換を促し、挙国一致で国策を推進できる幸運な立場にある、といえるだろう。
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