(写真はイメージです/PIXTA)

利上げにより不動産市場の冷え込みが心配される米国の不動産市場。直近の状況について、ニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏がレポートします。

1.結果の概要:住宅着工件数、許可件数ともに市場予想を大幅に上回る

3月16日、米国センサス局は2月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は145.0万件(前月改定値:132.1万件)と130.9万件から上方修正された前月、市場予想の131.0万件(Bloomberg集計の中央値)を大幅に上回った(図表1、図表3)

 

着工許可件数(季節調整済、年率)は152.4万件(前月:133.9万件)とこちらも前月、市場予想の134.3万件を大幅に上回った(図表2、図表5)

 

【図表1】【図表2】
【図表1】【図表2】

2.結果の評価:戸建て、集合住宅ともに着工・許可件数が増加

住宅着工件数の伸びは前月比+9.8%(前月▲2.0%)と6ヵ月連続ぶりにプラスに転じた(図表3)。戸建てが+1.1%(前月:▲6.8%)とプラスに転じたほか、集合住宅が+24.0%(前月:+7.1%)と2ヵ月連続のプラスとなったほか、増加幅が大幅に拡大した(図表4)

 

【図表3】【図表4】
【図表3】【図表4】

 

前年同月比は▲18.4%(前月:▲20.7%)と10ヵ月連続のマイナスとなったほか、4ヵ月連続で2桁のマイナスとなった。内訳をみると、戸建てが▲31.6%(前月:▲29.0%)と10ヵ月連続でマイナスとなったほか、減少幅が拡大した一方、集合住宅が+9.9%(前月:▲1.8%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

 

地域別寄与度(前月比)は、北東部が▲1.6%ポイント(前月:▲5.3%ポイント)と2ヵ月連続でマイナスとなった一方、中西部が+6.3%ポイント(前月:▲0.7%ポイント)、西部が+3.8%ポイント(前月:▲1.0%ポイント)と前月からプラスに転じたほか。南部が+1.3%ポイント(前月:+5.0%ポイント)と2ヵ月連続のプラスとなった。

 

先行指標である住宅着工許可件数は、前月比+13.8%(前月:+0.1%)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、増加幅が大幅に拡大した(図表5)。戸建てが+7.6%(前月:▲1.2%)と1年ぶりにプラスに転じたほか、集合住宅が+21.1%(前月:+1.8%)と3ヵ月連続のプラスとなったほか、増加幅が大幅に拡大した(図表6)

 

【図表5】【図表6】
【図表5】【図表6】

 

前年同月比は▲17.9%(前月:▲27.3%)と減少幅は縮小したものの、7ヵ月連続のマイナスとなった。集合住宅が+14.4%(前月:▲4.2%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた一方、戸建てが▲35.5%(前月:▲39.7%)と12ヵ月連続のマイナスとなった。

 

一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、3月が44(前月:42)と3ヵ月連続で改善したほか、市場予想の40も上回った(図表7)。内訳は販売見込みが47(前月:48)と前月から小幅ながら悪化したものの、販売現況が49(前月:47)、客足が31(前月:28)と前月から改善した。

 

【図表7】
【図表7】

 

NAHBのチーフエコノミストは「金融システムのストレスにより、最近長期金利が低下し、今後数週間の住宅需要を後押しするだろうが、住宅在庫のコストと入手可能性は、将来の住宅購入者にとって依然として重大な制約となっている」と指摘しており、足元の住宅ローン金利の低下は住宅市場には短期的には追い風となるものの、今後の住宅市場の回復持続性には慎重な見方を示した。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年3月17日に公開したレポートを転載したものです。

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