(※写真はイメージです/PIXTA)

NY州弁護士・秋山武夫氏の著書『司法の国際化と日本』より一部を抜粋・再編集し、「司法の国際化」が急速に進む今、日本はどう対応するべきか、日本企業はどう生き延びていかなければならないのかを考えていく本連載。この記事では「米国人が訴訟を多く起こすワケ」について見ていきます。

「悪質な行為」を罰する「懲罰的損害賠償」

「民活」の代表的な制度が「懲罰的損害賠償」(Punitive Damages)」です。通常、(補償的)損害賠償とは被告が原告に対し原告の損害を補償するものですが、「懲罰的損害賠償」とは、加害者の行為が悪質な場合、文字通り加害者を「罰する」ためにペナルティーを課し、戒めとする制度です。

 

加害者当人はもちろん、関係する業界、さらに社会全体で、同じような不法行為が繰り返されないよう予防の効果もねらっています。そのため、加害者に課される額は、補償としての賠償に上乗せされ、時には相当な額になります。

 

また、「罰する」という意味では罰金と同じですが、賠償金を受け取るのは政府ではなく、訴訟を提起した原告本人になります。加害者に対する懲罰ですから、加害者の懐具合により課される金額も上下します。

 

「懲罰的損害賠償」とは、制裁と抑止のための制度であるのと同時に、民事訴訟を起こすことで社会問題の是正に貢献した一般市民へのインセンティブ(報奨)でもあるわけです。

 

「懲罰的損害賠償」は陪審制と深く結びついて運用されてきました。どの程度の懲罰が適当かは市民感情によるところが大きいからです。

 

 

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秋山 武夫

NY州弁護士。

1969年一橋大学法学部卒業、同年丸紅に入社、以来50年にわたり国際法務の現場で活躍。

1975年ワシントン大学ロースクール卒。

元ピルズベリー・ウインスロップ・ショー・ピットマン法律事務所シニアパートナー。

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『司法の国際化と日本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

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