なぜ「有色人種・LGBTの人権保障」が前進しても「差別」が根強く残り続けるのか?映画が暴いた恐るべきアメリカの「差別社会の正体」

なぜ「有色人種・LGBTの人権保障」が前進しても「差別」が根強く残り続けるのか?映画が暴いた恐るべきアメリカの「差別社会の正体」
(※写真はイメージです/PIXTA)

2010年代のアメリカでは、オバマ政権の下、有色人種、LGBTの権利向上の動きが加速しました。しかし、そこにはある種の「ねじれ」がつきまとっていました。それが、2017年のトランプ大統領誕生により一気に噴出することになります。NHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサーの丸山俊一氏が著書『アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望』(祥伝社)より解説します。

批判すら「ひとつの商品」に過ぎないという現実

「お金を稼げ、ブラックマン、ブラックマン」と歌い、黒人エンターテイナーとしての自分にさえ、批判の目を向けるチャイルディッシュ・ガンビーノ。そこにはマイノリティ擁護の言説によっても変わらない現状があるとウィルモアは感じ、次のように述べる。

 

「このミュージックビデオが本当に面白いのは、誰もが『共犯者』として批判の対象となっているからだと思います。そしてそこにはグローバー自身も含まれているのです。

 

この曲の中に『金を稼げ』と言い続けている部分があるのですが、これは、アメリカン・ドリームや資本主義的な成功について歌っているのです。彼はグッチなどの高級品を持ったところで、社会に受け入れられるようになるわけではないと言っています。

 

成功は身を守ることにはなるけれど、社会構造のレベルで物事を変えることはできません。黒人の有名人や黒人の物語がスクリーン上でよく見られるようになったからといって、現実の生活は変わらない、ということを表現しているのです」

 

「カウンター」という形で、現実に立ち向かってきたはずのアメリカン・サブカルチャー。

 

しかし、カウンターも「アメリカ流資本主義」の中、一つの商品に過ぎない現実がそこにあった。

 

 

丸山 俊一

NHK エンタープライズ

エグゼクティブ・プロデューサー

 

アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

丸山 俊一

祥伝社

欲望の正体を求めて。想像力の旅が始まる。 NHK「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」アメリカ編を 完全書籍化 番組では放送されなかったインタビューも収録 理想、喪失、そして分断 アメリカはどこへ行こうとしているの…

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