なぜ「有色人種・LGBTの人権保障」が前進しても「差別」が根強く残り続けるのか?映画が暴いた恐るべきアメリカの「差別社会の正体」

なぜ「有色人種・LGBTの人権保障」が前進しても「差別」が根強く残り続けるのか?映画が暴いた恐るべきアメリカの「差別社会の正体」
(※写真はイメージです/PIXTA)

2010年代のアメリカでは、オバマ政権の下、有色人種、LGBTの権利向上の動きが加速しました。しかし、そこにはある種の「ねじれ」がつきまとっていました。それが、2017年のトランプ大統領誕生により一気に噴出することになります。NHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサーの丸山俊一氏が著書『アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望』(祥伝社)より解説します。

黒人の同性愛を受容する―ジョナサン・ローゼンバウム(映画評論家)の証言

「私がとても心を打たれたのは、映画が単に同性愛を取り上げたというだけでなく、黒人の同性愛をメインストリームにあるべきものとして受容することを印象づけた映画だったということです。

 

配慮されるべきとか、周辺文化だとか、特別なものとか、そういうものではなくてね。

 

この映画が重要なのは、そこに繊細さがあるからだと思います。ありきたりな黒人男性のステレオタイプである荒々しさではなく繊細さを描き出しました。ですが、意図的に逆にしたわけではありません。登場人物を自然に描写しただけのことなのです。

 

この映画は黒人の人生を様々な面からあらわにしていると感じました。一般的な黒人の人生ではなく―そんなものはありませんからね―これまで描写されることがほとんどなかった複数の異なる黒人の人生を。そうした繊細さが見られるのが特色です。」

リベラルもまた共犯関係にある

そして、2017年1月、ドナルド・トランプが第45代アメリカ大統領に就任する。

 

「アメリカ・ファースト」「メキシコに壁を作る。中国、日本を倒す」など選挙戦を通じ、移民などのマイノリティを排除する言葉を振りまいてきたトランプ。

 

彼が大統領に就任した2017年に、ヘイトクライムの発生数は、前年に比べ17%も増加していた。大統領選後、トランプの勝利を受け、オバマはこう漏らしたという。

 

「私たちは夢を追い過ぎたのかもしれない。10年か20年早かったのか……」

 

早すぎる変化への反動が、時代を覆う。そうした2017年公開の映画『ゲット・アウト17』。

※17『ゲット・アウト』(Get Out) 2017年 監督:ジョーダン・ピール 出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ ▶黒人カメラマンのクリスは、恋人ローズ・アーミテージの両親に紹介されることになった。アーミテージ一家は表向きリベラルな考え方を表明し、クリスを受け入れているかに振る舞っているが、彼はどこか違和感を覚える。

 

スリラーだが、クライマックスの恐怖以前に何気ないシーンが怖い。

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アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

丸山 俊一

祥伝社

欲望の正体を求めて。想像力の旅が始まる。 NHK「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」アメリカ編を 完全書籍化 番組では放送されなかったインタビューも収録 理想、喪失、そして分断 アメリカはどこへ行こうとしているの…

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