(※写真はイメージです/PIXTA)

「事業承継」は、すべての中小企業経営者の方にとって避けて通れない問題ですが、何から手を付けたらいいのかわかりにくくなっています。そこで、数多くの中小企業の事業承継税制の認定業務を担当してきた中小企業診断士・CFPの平賀均氏が、著書『まだ間に合う! 最新 事業承継税制—特例承継計画と納税猶予の申請 』(ロギカ書房)より、事業承継を考えるうえで知っておくべき5つの問題点についてわかりやすく解説します。

問題3|経営権の安定のためには自社株式の集中が必要

法的な意味では、事業承継は、「(1)会社の代表者としての地位(代表取締役社長)を引き継ぐこと」、および「(2)自社株式を引き継ぐこと」です。

 

非上場会社においては、経営者=株主であること、すなわち「経営(代表取締役社長就任)」と「会社の所有(株主の保有)」とが一致することで、経営の安定化を図り、迅速な意思決定を行うことができます。

 

後継者が自社株式の過半数を持てば、配下の役員の選任・解任権があり、自分が解任されることはありません。また、3分の2以上を保有すれば、株主総会での特別決議が可能となり、ほぼ思いのままの経営ができます。

 

株式を3%保有すれば、会計帳簿の閲覧請求権や株主総会招集請求権、1%の保有で株主提案権があります。

 

中小企業の場合には、これらの権利が行使されることは稀ですが、株式が分散していると、少数株主からの請求で、思わぬトラブルに発展する懸念はあります。

 

したがって、理想は100%、最低でも過半数、できれば3分の2以上の株式を後継者単独あるいは後継者の身内を含めた同族内で保有するなど、株式の集中を図っておくことが極めて重要になります。

問題4|財産分割にあたっては民法上の遺留分に配慮する

被相続人(亡くなった人)に遺言書(法律上は「イゴンショ」という)があれば、その内容に基づいて相続財産を引き継ぎます。「遺言書」がなければ、相続人(財産を受け継ぐ人)の間で、誰がどのように相続財産を分けるかの話合い(遺産分割協議)を行い、遺産分割協議書を作成することで相続財産を分配します。

 

悲しみに暮れながらも、通夜・葬儀・法事等を慌ただしく済ませ、各種の手続きを市町村中心に行うことになります。相続税は相続開始の日(死亡日)の翌日から10カ月以内に、現金で税務署に納めなければなりませんので、日時的な余裕はありません。

 

法律上の相続人を法定相続人、取得できる財産の法律上の割合のことを法定相続分といいます([図表3])。遺産分割協議は話合いですので、この法定相続分より多くあるいは少なく取得することができます。

 

[図表3]法定相続分と遺留分

 

遺言書があっても、相続人全員の協議によって遺言内容と異なる合意が成立したときには遺産分割協議が優先されます。

 

通常であれば法定相続分に従い分割する、あるいは協議をして内容を詰めていくことになりますが、円満に解決しない場合には遺産分割調停を家庭裁判所に申し立て、調停不成立の場合には、審判による分割となります。

 

遺留分(イリュウブン)とは、遺産に対する「最低限の取り分」のことです。

 

法定相続分と同様、民法で定められています。兄弟姉妹を除く、法定相続人(配偶者、子、直系尊属である父母)には、遺言によっても取り上げることのできない遺留分があります。

 

相続財産が遺留分に満たない場合は、ほかの相続人に対して、遺留分侵害額請求を行うことができます。

 

以前は、遺留分減殺請求という名称で、不動産や株式の相続などを侵害された限度内で取り戻すことを請求できましたが、その際には不動産や株式が共有状態になり、権利関係が複雑になりました。

 

2019年7月以降は、遺留分を侵害された価額を金銭で請求できるようになったため、遺留分には十分な配慮が必要です([図表3]参照)。

次ページ問題5|金融機関からの借入金に関する個人保証及び資金調達の問題
まだ間に合う! 最新 事業承継税制—特例承継計画と納税猶予の申請

まだ間に合う! 最新 事業承継税制—特例承継計画と納税猶予の申請

平賀 均

ロギカ書房

令和6年3月31日まで、特例承継計画提出期限迫る!! 最新の様式と記入例により、具体的な手順と内容を示し、 申請手続きを効率的に行えるよう解説!! 現在、国内の中小企業数は減少傾向にあり、そして経営者の平均年齢は上昇…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録