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異常気象・自然災害に振り回された1ヵ月
今年のニュージーランドは、1月末の豪雨に始まり、2月に入ってからはサイクロン上陸により北島を中心とする各地で水害が発生。土砂崩れで道路が封鎖され、一部の町が孤立する事態になったほか、一瞬にして自宅が崩壊する被害を受けた人もいます。
酪農が盛んな地域では、家畜や収穫を目前にした農作物にも大きな被害が出ています。
100年ぶりの大災害ともいわれる暗いニュースで、今年のニュージーランドの夏はスタートしました。
そもそも、夏とはいえないほど涼しい夜もあり、気候温暖なオークランドがこの時期に暖房を入れる羽目になるなど、異常気象を痛感しています。
その一方、テレビや地元のコミュニティーでは、政府のサポートでヘリコプターを飛ばして救済活動する人、水・衣料品など様々な寄付を集い被災地に届ける人、炊き出しをする人、教会や大型施設へ避難して身を寄せ合って過ごす人、避難を余儀なくされ、苦しみ・悲しみのなかにありながらも、音楽を聴き、泣き笑い、前を向く人…など、助け合う多く人々の姿を見て、少し安堵するとともに、家とはなにか、マイホームとはなにかを考えさせられました。
筆者はニュージーランドに移住して25年が経ちますが、この一連の災害を受け、ニュージーランド国内の地理の知識の乏しさに気づくことになりました。
主要都市はわかるものの、水害の被害を受けた町の名前をテレビで聞いても、位置関係が頭に入っていない、マオリ系の名前だと覚えるのにも一苦労。地名を聞いて、マップで検索する始末でした。
また、被害を受けた地域の映像をみると、橋や道路が陥没しているところが多かったようです。
筆者は、現在住んでいるオークランドの南にあるワイカト地方に行く機会が多いのですが、この地域の道路も被害を受けた道路と似た作りになっており、もし、少しでもサイクロンの進路がずれていたら、自分が行動範囲とする街も被害に遭ったかもしれない、いつも使う橋が崩れたら、オークランドに戻れなかったかもしれない…といった心配が頭に浮かびました。
それと同時に、コロナウイルスによって他の地域との行き来を禁止されたロックダウンのときのことを思い出しました。
悩ましい「地方移住」の問題…家選びの基準は?
近年、オークランドの不動産価格上昇の影響、そして、コロナ禍によるステイホームや、在宅勤務、リモートワークの普及によって、必ずしも、オフィスに出勤しなくてよい職種の方も多くなったことから、地方移住者が増えているようです。
ほかにも、移民がニュージーランドで永住権を取得する場合、学歴・職歴やニュージーランドでの雇用の保証などがポイント評価され、ポイントが高いほど永住権が取得しやすくなる、という制度となっていますが、オークランド以外に居住する場合は、高ポイントの評価が受けられます。
人口がオークランドに集中しないよう「分散化」を目指す政府の方針が、こういったところにも影響しているのです。
また、車の量が増えて絶えず高速道路が渋滞し、土地の減少でかつての緑豊かな静かな町が消え去った昨今、ライフスタイルを重視するために郊外の家に住みたい、という方も増えてきましたが、それを通り越して、地方都市へ移住したい、という考える方も出てきました。
しかし、今回の水害で被害を受けた地域の多くは地方都市です。「この先、これらの地方都市の不動産販売はどんな状況になるのだろうか?」「牧草地帯でのどかな街、静かな街に住みたいからといって、簡単に地方都市に移住していいものなのか?」といった不安がよぎるようになりました。
不動産売買コンサルタントとして、家選びの際は顧客の好みを聞き、近隣の土地の傾斜、水路の位置、家の質などを吟味し、建築専門者にも検査を受けるなど、慎重に購入する物件の精査し、情報を提供する、というスタイルをとっています。
先日携わったケースでは、近くに水路があり、データ上でも浸水率が高いとされている物件がありました。しかし売主は「50年この家住んでるが一度も浸水はしていない」と主張しています。
その他の条件は買い手の希望ともおおむね合致していましたが、どうしても水路の存在が気がかりでした。
確かに、いままで水害が発生したことはなかったのかもしれませn。しかし、1回でも、1%でも発生する可能性がある限り、100%安全とはいいきれません。仮にリスクを負って購入し、生活するなかで本当に水害に遭った場合、その被害から自分で立ち直るだけの力があるかどうかを見極めて、購入の有無を決めてほしい――。
そんな切羽詰まった思いで、買い手夫婦の決断を見守っていましたが、結局は奥様の「そもそもデザインが気に入らない」という一声でその物件は破談に。後日、別の物件を購入されました。筆者としても、ホッとした一幕でした。
我々は気軽に「50年間被害がないのだから大丈夫でしょう」などと、簡単にいえる立場ではないことを実感しました。
国同士、そしてひとり一人が助け合いの精神をもって…
日本は地震・台風と自然災害も多く、日頃からの対策が心掛けられています。しかしニュージーランドは、広大な土地ゆえに建築法もシンプルで、防災意識もあまり高くないといった側面がありました。
そこに今回のサイクロンが上陸です。被害を受けたことにより、建築法の改善や、人々の防災意識の向上、平時からの備えといった課題を突き付けられ、1人ひとりが災害について考える時期を迎えたように思います。
日本でも、東京・大阪のような大都会の住民と、田畑がある地方都市の災害対策は異なると思います。家がマンションなのか、一戸建てなのかによっても異なります。
日本では災害対策として最低限の品をリュックに詰め、懐中電灯、水、非常食を確保、または防災セットを準備しておく…といった対策が多いかもしれません。
一方、ニュージーランドは車社会です。また、一家に一台BBQコンロがあるといわれているので、停電になったとしてもLPGガスがあれば、非常食ではなく、なんとか調理ができます。そういった設備の違いもあり、災害時に用意するべきものも異なりますが、それでも、この地でなにか日本の常識・知識が役立たないものかと思案する今日このごろです。
単に物品だけのことではなく、メンタル的な面でも、日本人は復興までの道筋を知っています。ニュージーランドの場合は、コミュニティの力が強いため、ボランティア活動のノウハウが形成されつつあります。人々のあたたかな対応が復興を支えているのです。
この記事を読まれている日本の読者の方々は、各々得意分野を持ち、それぞれご活躍されていると思います。こういった時期だからこそ、人としての道をいま一度みなで考え、お互いのサポートや、両国及び世界の地で不足している知識を補完・共有できることを願っています。
筆者が20歳で初めての海外旅行を経験したとき、日本には当たり前のようにあるけれど、外国にはないもの、逆に、外国にはあるのに日本にないもの、同じ品なのに、大きく異なる価格…といったことに、大きなカルチャーショックを感じたことを覚えています。
この経験が「日本人ではなく、地球人として生きてみたい」という思うきっかけとなり、貿易・為替の勉強しようと思った原点となりました。
いまは技術の発展したネット社会ですが、現実でも、半日あれば他国との行き来が簡単にできる時代です。ネットの力を大いに活かせば、危機に直面している国の人のサポートだって、タイムリーにできるのです。
それをビジネス的な側面だけを考えて行動してもいいですし、気が付いた方が、ご自身のネットワーク・力による人道的サポートという形をとってもいいでしょう。
両国の友好の道を築けること、新年度である4月には不動産マーケットについて明るい話題ができることを信じます。
一色 良子
Goo Property NZ LTD 代表取締役社長
Harcourts -Shelter Realty Ltd 所属
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