家庭内の現金のやり取りが税務署にバレるのはなぜ?
たとえば、夫が渡した現金で妻が食料や医療費など、日々の生活に必要な商品やサービスに支払ったとしても、贈与税は課されません。親子、祖父母と孫、兄弟姉妹など、扶養関係にある者が入学金や学費など、必要な教育資金をその都度払っても、贈与税は非課税です。
ただし、今回のC夫妻のケースのように、住宅といった財産価値のある高額な買い物をした場合は注意が必要です。不動産には固定資産税が発生しますし、住宅の所有者として不動産登記しますので、法務局で調べれば住宅購入資金が動いたことがすぐわかります。
「現金で渡せばわからないだろう」という人もいて、確かに家庭内での金銭のやり取りはわかりにくいのですが、最終的には相続が発生すれば贈与は発覚します。死亡届を役所に提出すると税務署にも通知され、贈与税や相続税の申告漏れが疑われれば、税務署は相続人の金融口座も徹底的に調べるからです。
国税庁『令和3事務年度における相続税の調査等の状況』でも、贈与税の税務調査(実地調査)での財産別申告漏れ等の非違件数は「現金・預貯金等」が最も多くなっています。
ただ、気になるのは先日の報道です。2019~2020年の2年間に関してはコロナ禍のため、申告・納期限を1ヵ月延長できる猶予措置が講じられていました。ところが、全国354の税務署で延長されていないものとして、贈与税申告者のうち約2,100人、計約516万円の延滞税が誤って徴収されたとのことです。
これに対し、国税庁も謝罪文を発表し、延滞税を誤課税された納税者には、所轄税務署から個々に謝罪と内容説明の連絡が入ることになりました。また、過大徴収税額に関しては還付手続きの説明もあるということです。
話を住宅購入に戻すと、夫婦共有名義にすれば、確かに相続税対策としては有効です。夫と妻の持分が1/2ずつなら、たとえば夫が亡くなり、妻がその住宅を相続した場合、それに対する妻の相続税課税は半分で済みます。相続財産評価額によっては、配偶者控除の適用で相続税が非課税になる場合もあります。
しかし、夫婦で持分を半々にするため、資金を提供し合うのは贈与税が課される可能性が高いことを考慮しなければなりません。
贈与額を暦年課税の年間110万円の基礎控除内にするとか、婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の購入資金提供であれば、最高2,000万円まで控除できる「おしどり贈与」の特例を適用する方法もあります。
夫婦間であっても高額財産のやり取りは、事前に専門家へ相談したほうがいいでしょう。これから住宅ローンを組んで自宅購入する若いカップルも、頭金貯蓄の口座を夫婦共有にするのはキケンです。金融機関や司法書士ともよく相談されることをおすすめします。
岡野雄志
岡野相続税理士法人
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