(※写真はイメージです/PIXTA)

近年では、大手企業を中心に、才能豊かな若手の人材確保のため、積極的な待遇改善や給与額アップといった対策を打ち出しています。そんな状況にわが身を嘆き、焦りと嫉妬を募らせる中高年会社員ですが、その対立構造を「蚊帳の外」から見ている人たちも…。実情を見ていきましょう。

若手 vs.中高年社員の対立を横目で眺める「場外の人」

人材不足が叫ばれるなか、大手企業を中心に、初任給引き上げのニュースがしばしば聞こえてきます。優秀な従業員を確保すべく、どこの企業も必死の形相です。

 

★三井住友銀行、4月入行新卒の初任給、一律5万円引き上げ

★ユニクロを運営するファーストリテイリング、新卒初任給は30万円に

★JR東日本、初任給8,000円引き上げへ

★オリエンタルランド、大学卒業以上で初任給を前年から2万円上乗せ

 

新卒から30代ぐらいまでの若年層をターゲットに、様々な施策を行っていますが、すでに給与水準が高額になっている40代や50代についてはどうなのでしょうか?

 

40代・50代のサラリーマンといえば、自分の仕事の能力について、すでに痛いほど理解している世代。若手のようなチャレンジングな働き方を志望する人は少なく、定年まで、できるだけ波風立てずに過ごしたい人が大半ではないでしょうか。企業もそれをよく理解しているからこその「若手を中心の賃上げ」だといえます。

 

40代・50代会社員からすれば、若手への厚遇は面白くないでしょうが、自身の安全を考え、不満を感じつつも、定年まで無難に乗り切りたいというのが本音でしょう。

 

しかし、そんな「若手・ベテラン」のせめぎあいの「蚊帳の外」に置かれている人たちいます。それが「非正規」の立場で働く方々です。

 

現在の40代・50代前半の方々は、就職氷河期に直面した世代でもあります。この方たちが大学を卒業した1990~2000年代は景気が冷え込み、多くの企業が採用活動を縮小・中止しました。それにより、思うような就職ができず、非正規雇用の立場で転職を繰り返すことになった人も少なくありません。

 

2000年代後半には一時的に雇用環境が改善し、そのタイミングで正社員に滑り込めた人はセーフでしたが、その後はリーマンショックが直撃を受け、状況は悪化。2010年代中ごろに改善するも、そのときすでに最初の氷河期世代は40代後半です。キャリアのないミドル~シニアの方を企業が正社員として積極採用するケースは少なく、多くの方は、いまなお非正規の立場まま就労を続けています。

 

就職氷河期の問題は、社会的にも注目され、正社員化を後押しする支援が提案されるなど一定の動きはあったものの、「いまさら感」はぬぐいきれません。

恵まれた「50代非正規」が65歳から手にする年金額

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒男性・非正規社員の給与(所定内給与額)の中央値は24.5万円。50代前半は22.3万円、手取りにすると17万円ほど。

 

新卒~60歳定年まで、現在と同じ給与水準で、厚生年金にも加入していたと想定して、その場合の65歳からの年金額を試算してみましょう。

 

年金の支給額ですが、国民年金は「年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)」、厚生年金は、加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できます。

 

便宜上、②だけで計算すると、国民年金は月5.2万円ほど。厚生年金は満額支給で現在の受給額で考えると、月11.6万円ほどの年金を手にすることになります。

 

ただこれは、非正規でも厚生年金に加入できたというラッキーなケースです。

 

2020年10月から、非正規(短時間労働者)に対する厚生年金保険の適用が拡大されましたが、それ以前の場合、非正規は厚生年金に加入できないことも珍しくありませんでした。つまり、月11万円よりさらに少ない年金しか受給できないケースも多いと考えられます。

 

当然ですが、老後生活を送るにはそれだけの年金額では十分とはいえません。氷河期世代・非正規の方たちは、公的年金だけで生きていくのは困難となる可能性が高く、多くの場合、高齢となっても就労を継続する必要があるでしょう。

 

最悪の場合は「生活保護」というセーフティーネットが用意されていますが、いちばん困っているときに国からスルーされてきた氷河期世代の方たちは、「いまさら国に頼りたくない」という思いがあるのではないでしょうか。

 

「生活は厳しく、結婚もできず、老後の見通しも立たない。可能性のあった若い時代に、国からも企業からもそっぽを向かれた結果が、いまのこの生活…」


ある50代の非正規・氷河期世代の男性は、そうつぶやいていました。

 

国は2020年度から3ヵ年の計画で氷河期世代などの就労支援に乗り出したものの、コロナ禍と重なって思うような成果が見込めず、支援事業の2年延長を決定。しかし、それで十分な成果が得られるのでしょうか。

 

いま一度、就職氷河期の方々の支援について、再考が必要かもしれません。

 

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