(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年3月2日現在、ある「経済産業省令」がパブリックコメント(意見公募手続)にかけられています(期限は3月10日(金))。その内容は、インボイス制度の施行によって電力会社に損失が発生することになるため、それを「電気料金の値上げ」によってカバーするというものです。どういう意味なのか、問題点も含め解説します。

電気代値上げにつながる「省令案」の中身とは

パブリックコメントにかけられているのは、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案」です。そのうち、電気料金の値上げに関連する箇所の文面は、以下の通りです。

 

【施行規則改定案(13条の3の3 調整交付金の額の算定方法)】

「法第15条の3の規定に基づき算定して得た額から控除する額として、「消費税に係る仕入控除税額(交付金に係る消費税相当額のうち、消費税法の規定により仕入れに係る消費税額として控除できる部分の金額をいう。))を新たに追加する。」

 

これは、インボイス制度が施行されると、電力会社が「FIT(固定価格買取制度)」の制度に基づいて電力を買い取る場合に損失が発生することになるので、その補てんのために、電気料金を値上げできるようにするものです。

 

「FIT」は、太陽光発電設備によって発電された「余剰電力」を、電力会社があらかじめ決まった価格で買い取る制度です。

 

なぜ、インボイス制度によって電力会社に損失が発生することになるのか、以下、解説します。

 

◆消費税インボイス制度の「仕入税額控除」とは

まず、前提として、インボイス制度の「仕入税額控除」の理解が必要になりますので、説明します。

 

現行法上、消費税の納税方法には以下の2種類があります。

 

・仕入税額控除(本則課税)

・簡易課税制度

 

このうち、「仕入税額控除」(本則課税)は、消費税の納税義務を負い、かつ年間売上高5,000万円以上の事業者に適用される消費税の納税方法です。

 

「売上金額」に含まれる「消費税相当額」から、「仕入額」に含まれる「消費税相当額」を控除し、その額を納税するというものです。所得の計算における「売上」と「経費」の関係と同じです。

 

「FIT」で電力を買い取っている大手電力会社は、売上高の規模が大きいので、この「仕入税額控除」を行っています。

 

◆「インボイス制度」が「電気代値上げ」につながるしくみ

では、インボイス制度がなぜ電気代の値上がりにつながるのでしょうか。

 

「FIT」で余剰電力を電力会社に販売している「売電業者」の多くは、消費税の「非課税事業者」です。

 

なお、事業者ではない「一般家庭」の場合はそもそも消費税の課税対象外です。

 

これまで、電力会社は、非課税事業者から買い取った電力について、「仕入税額控除」を行ってきました。しかし、インボイス制度が施行されると、「仕入税額控除」ができなくなってしまうのです。

 

なぜなら、インボイス制度の下では、「仕入税額控除」を行うために、それを証明する資料として、仕入先からインボイス(適格請求書)を受け取る必要があるからです。

 

しかし、非課税事業者は「インボイス」を発行することができません。その結果、電力会社はインボイスを受け取れず、「仕入税額控除」ができなくなってしまうのです。

 

これによって、電力会社には、従来であれば「仕入税額控除」できていたはずの金額について、損失が発生することになります。

 

そこで、現在パブリックコメントにかけられている経済産業省令の案は、電気料金の一部である「再エネ賦課金」(再生可能エネルギー発電促進賦課金)に上乗せして、一般契約者から徴収することでまかなうとしているのです。

 

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