(※写真はイメージです/PIXTA)

建物、土地などを所有していた人が亡くなり、その遺産を相続した人の名義に変える手続きを「相続登記」といいます。これまでは任意でしたが、2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されます。こうしたなか、現在でも相続登記をしなかったばかりに「思わぬ問題」に直面することがあると、牧野FP事務所の牧野CFPはいいます。実家の建替えを計画したDさんの「無知が招いた結末」をみていきましょう。

両親を亡くし、実家の建替えを計画したDさん

Dさんは、妻と両親と2世帯で生活していました。もともと祖父が建てた実家で、土地も祖父から父が受け継いだものです。

 

数年前に母が亡くなり、その後、1年半前には父も亡くなりました。

 

築古の家は、雨漏りがあったり、外壁が剥がれたりと老朽化が進んでおり、改修のたびに修理費がかさみます。そこでDさん夫婦は、かねてより計画していた建替えを実行することにしました。

 

建替えの費用は、いままで貯めた資金と、銀行で融資を受け住宅ローンでまかなうことに。そこで、仕事で懇意にしていたK工務店と解体・新居建築の仮契約を結び、手付金(のちに建築費に充当)として300万円支払いました。

 

また、Dさんは住宅ローンについて複数の銀行のサイトを見比べて、そのなかからある銀行を選び、住宅ローンの「事前審査(仮審査)」を申し込みました。

 

K工務店の社長「Dさん、相続登記は済んでます?」

数日後、銀行から「事前審査(仮審査)」に通ったと連絡がありました。Dさんは、「順調に準備が進んでいる」と思い、「本審査(正式審査)」に申し込むための資料を揃え始めました。

 

そんなとき、K工務店の社長から電話がありました。

 

「Dさん、相続登記は済んでます? 土地・建物の登記がDさん名義じゃないみたいだけど」

 

Dさんは、とっさに相続登記とはなにか理解できず、「それなに?」と、K社長に尋ねました。

 

「相続登記」とは、端的にいえば、相続した不動産の名義を自分名義に変更することです。K氏が業務上、念のために現在の土地・建物の登記名義を調べたところ、ともにDさんの祖父名義のままだったことがわかったため、Dさんに電話をかけたのでした。

 

銀行で融資を受ける(住宅ローンを組む)には、申込者の本人名義で登記している土地や建物を担保として、銀行に提供する必要があります。銀行は、その担保に抵当権を設定し、万が一返済が滞ったときは、担保を競売にかけて売却するなどして、融資した資金の回収を図るのです。

 

したがって、相続登記を行い、担保の名義がDさん本人でなければ、住宅ローンを組むことはできません。

固定資産税は父が納付していたはずが…

DさんはK社長の話を聞いて、生前父が市役所からの支払納付書を見ながら「こんな古い家なのに、なんでこんな額の固定資産税を払わなきゃいかんのか」とよくこぼしていたのを思い出しました。そして、「父が固定資産税を払っているのであれば、すでに父名義になっているはずだから、そこから自分名義に相続登記すればいいのだな」と思いました。

 

しかし父は、「固定資産税」は払っていたものの、祖父から相続した土地・建物の相続登記を済ませてはいませんでした。

 

土地・建物の名義人が死亡した場合、その後の固定資産税・都市計画税は、それらを相続した人が納付します。しかしDさんの場合、父が相続した土地・建物は登記されていないため、相続人全員(父のきょうだい全員)の共有名義で所有している状態となっています。したがって、税金の納付は相続人全員で行うことになります。

 

しかし、Dさんの父は長男であり、名義人(祖父)と同居していました。市役所は、納付書を相続人の代表として父のところに送り、そのまま父が払っていたのでしょう。

 

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