“悠々自適な老後”のはずが…役員の座を奪われたAさん
59歳のAさん。東証プライム(一部)上場企業で部長を務め、年収は約1,170万円あります。現在は、10歳年下の専業主婦の妻と17歳の息子と3人で暮らしています。
39歳で結婚後、42歳で子供が産まれ、44歳のときに人気エリアにある約7,500万円の戸建て住宅を購入しました。購入費用のうち、住宅ローンを組んで銀行から融資を受けた7,200万円は、35年ローンのため現在も返済中です。
社内の同期のなかでも自他ともに認めるトップクラスのエリートだったAさんは、「60歳になれば役員に昇格できる」と確信していました。
Aさんは、「60歳になると2,200万円の退職金を受け取れるだろうから、それを住宅ローンの残債と息子の大学進学の費用に充てよう」「役員になれば役員報酬は現在の年収よりも増えるし、まあ70歳までは働けるだろう」と将来を楽観的に考えていました。
ところが、現実にはある同期に役員の座を奪われ、60歳からは5年間、関連会社への再雇用が決定。年収は増えるどころか、これまでの半分になります。打ちひしがれ、将来に不安を覚えたAさんは、妻に連れられ筆者のFP事務所を訪れました。
家計破産は目の前に迫っていた
Aさんの主な家計収支は、以下の通りです。
※1 <参考>総務省統計局「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要」(50歳代の消費支出額:28万3,725円)
※2 <参考>国土交通省住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」(分譲戸建住宅年間返済額:126万円)
筆者は、上記の家計収支をもとに、60歳以降年収が540万円に下がるAさんの、家計収支シミュレーションをしてみました。
すると、いままで通りに支出を続けていくと、65歳になると受給できる老齢厚生年金を待たず、「64歳で2,200万円の退職金を使い果たし、住宅ローンの残債約3,000万円を残して家計が破産する」ということがわかったのです。家計の危機が間近に迫っていたのでした。
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