中国が「GDP世界2位・日本の3倍」になっても「先進国」にはなれない理由

中国が「GDP世界2位・日本の3倍」になっても「先進国」にはなれない理由
(※写真はイメージです/PIXTA)

高校での投資教育が必須になるなど、経済に対する教育への関心が高まっています。そこで本連載では、専門的な知見を生かし、経済に関するニュースをわかりやすく解説することで人気を博している経済キャスターのDJ Nobby氏が、著書である『実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!』(KADOKAWA)から、日本と世界の経済について解説します。

経済力はあるけど、中国が「先進国」ではない理由

中国は、2010年に日本を抜いてGDP世界第2位になりました。国別の比較では世界トップの経済規模ですが、中国は実はまだ「先進国」ではありません。OECD(経済協力開発機構)の分類は、「上位中所得国」。

 

名目GDPはトップレベルでも、一人当たりGDPで見ると圧倒的な遅れを取っています。経済特区として発展してきた沿岸部は先進国に近い暮らしを送っている人が多いものの、内陸部ではまだまだ一人当たりの生産性が低い水準にあることが原因です。

 

中国政府はこれまで明確に「先進国化を目指す」としたことはありません。中国政府が積極的に先進国入りを目指さない理由はいくつか考えられます。

 

・民主化(資本主義化)で一党独裁体制が崩れる可能性があるため

・先進国になると、国際問題が起きた場合に他国と一致団結して援助等をする必要が出てくるため

・CO2など、世界的な環境問題への対応が求められるため

 

先進国になると、他国への援助や環境問題への対応など、自国の利益を他の国に分配する必要が出てきます。いまの段階ではこのような責務を負いたくないというのが本音なのではないでしょうか。

 

【Nobby‘s point】日本の中国支援は最近まで続いていた

いまとなっては日本はGDPで中国に抜かされていますが、日本は2022年まで実に40年以上にわたり中国にODA(途上国援助)を行っていました。JICA(国際協力機構)によると、対中国ODAのうち、無償資金協力は約1,600億円、円借款(お金を貸す)は約3兆3,000億円、技術支援は約1,900億円にも及びます。

 

中国が急速な経済発展を遂げ、さらに中国自身が他の途上国に戦略的な支援を行うようになるなど、日本からの支援はもはや必要なくなったと判断されたようです。

 

日本が発展を支援してきたにもかかわらず、現在はさまざまな分野で日中の対立が激しくなっているのは、少し皮肉な気もしますね。

中国の格差は、独特の「戸籍制度」によるもの?

中国は国内の格差がかなり大きな国です。上海など沿岸部の発展した地域には、先進国の基準でも富裕層と言われるような人が多数存在しています。一方、農村部の収入は平均して都市部の3分の1程度。都市部と農村部の所得格差は国内でも大きな問題となりつつあります。

 

国内の格差が開いている背景として考えられるのが、戸籍制度。中国では一元的な戸籍管理が行われており、定住場所が制限されています。伝統的に都市と農村が明確に切り離されており、農村部で生まれた人が都市部の戸籍を取得することは容易ではありません。

 

戸籍制度の導入は1950年代後半。目的は、都市住民の食料供給安定・社会保障充実です。農村戸籍の人が都市で出稼ぎをすることもありますが、あくまでも戸籍はもとのまま。都市住民と同じ社会保障を受けることはできず、圧倒的に不利なのです。

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実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!

実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!

DJ Nobby

KADOKAWA

経済のしくみを知れば、お金に強くなる! 2022年から高校での投資教育が必須になるなど、経済に対する教育への関心が高まっている。これからの時代、自分らしく生きるための暮らしを手に入れるには、経済の知識と動きをしっ…

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