グローバル経済が縮小し、自由な貿易ができなくなる?
ウクライナ侵攻により、グローバル経済の動きが縮小していくことが想定できます。これまでは、それぞれの国が得意分野を生かして食料や工業製品を生産し、各国が自由に貿易を行うことでグローバルな経済を構築していくという機運が高まっていました。
しかしこれは、各国間の対立がないことが前提になっています。今回のように戦争が起きてしまうと、「あの国とは貿易するな」という経済制裁が発動されるなど、さまざまな障害が出てきます。
いままではグローバル経済の名のもとに自由貿易が行われていましたが、現在は各企業がサプライチェーンの見直しに着手しており、今後は友好国同士でしか貿易が行われなくなる可能性もあります。
世界経済はすべて絶妙なバランスで成り立っているので、大きな事件が起きるとドミノ式に崩れてしまいます。今回のウクライナ侵攻で、そのリスクを各国が再認識したといえるでしょう。
今後は、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)のような経済グループの枠組みが世界で作られていくのではと思っています。
そのグループの中に、産油国は含まれるか? 農業国はあるか? など、枠組み内で経済の営みを完結させられるかが、それぞれのグループの強さになっていくと考えられます。
ウクライナ侵攻で気になるアメリカ政府の動き
アメリカ大統領の方針は、金融以外の分野においても世界に影響を与えます。例えば、政党により「戦争が起こりやすいかどうか」も変わります。
共和党と民主党の最も大きな違いは、「政府が民間にお金をたくさん出すかどうか」。
共和党は市場の原理に任せるという方針のため、軍事力強化という方向にも行きにくいと考えられます。
逆に民主党は、経済コントロールのため市場にどんどん介入します。軍事力強化に資金を投入し、雇用を増やすことで経済を回そうという考え方になりやすいのです。
実際、バイデン氏は「軍事費を4%ほど増やす」と発言しています。
■Nobby‘s point
ウクライナ侵攻とアメリカ大統領
もしも、アメリカがトランプ政権のままであれば、ウクライナ侵攻は起きなかったと考える人も多くいるようです。
理由は、トランプ政権の強みの1つであるロシアとの強いパイプ。東西冷戦時代の筆頭対立国の首脳同士が緊密な関係であることが、お互いの安心感に繋がっていたと考えられるからです。
これは完全に私見ですが、米露の緊密な関係性があったからこそ、絶妙なパワーバランスが保たれていたのではないでしょうか。
DJ Nobby
経済キャスター、金融コメンテーター、ラジオDJ