士業専門家の報酬相場
遺言執行者として適任なのは弁護士・司法書士・税理士・行政書士で、報酬目安は下表の通りです。
遺言内容によって相続人の揉め事が発生するおそれを考慮する場合、報酬額は高めでも紛争解決に対応できる弁護士を遺言執行者として選んだ方が無難です。
弁護士以外の士業は比較的報酬等が割安になっています。ただし、相続人の揉め事を家庭裁判所の調停・審判等で解決する際、当事者をサポートしてくれるのは弁護士だけです。
相続不動産が多いなら登記のプロの司法書士、課される相続税が多いなら税理士、相続人の調査・財産調査を慎重に進めたいなら行政書士へ任せましょう。
各事務所によっては基本料金を定めていないところや、交通費等が無料というところもあります。
金融機関の報酬相場
信託銀行等の金融機関に遺言執行の依頼が可能です。信託銀行では遺言書の作成や保管、遺言執行を包括したトータル的なサポート・サービス(遺言信託)を提供しています。
充実したサポート・サービスが受けられるので、遺言者や相続人も安心して任せられます。ただし、執行自体は士業専門家に業務委託するので外注費用が上乗せされることに注意しましょう。
報酬相場は相続財産の1~3%を目安としているものの、最低報酬額は100万円と設定している金融機関が多いです。
遺産総額が多い場合に金融機関は頼れる存在ですが、まず遺言者の方で保有している資産や負債をよく確認してから依頼した方が無難です。
親族(一般人)の報酬相場
親族に遺言執行者を頼む場合、頼んだ相手が無報酬で良いなら無理に報酬の設定は不要です。遺言書で報酬について明記されていたり、相続人で取り決めたりした内容に従います。
得られる遺産から差し引いて報酬を取得しますが、概ね20〜30万円となるケースが多いようです。
家庭裁判所で決めた場合の報酬相場
家庭裁判所で報酬を決める場合は、明確に報酬額が法定されているわけではありません。次の諸事情を考慮し算定されます。
・遺言者との関係性:遺言執行者は遺言者の親族か第三者か
・相続財産の種類や状況:相続財産はどれ位あるのか、負債等も考慮
・執行事務の内容・難易度:相続人で揉め事がないか等
・遺言執行者の地位・収入
これらの状況を踏まえ、報酬額がどれ位になるのかは家庭裁判所の裁量次第です。
遺言執行者の報酬は誰が負担する? 支払うタイミングや支払い方法も解説
基本的に遺言執行者の報酬は、相続人全員が負担し遺言執行の完了後に支払います。
もしも相続人が遺言執行者ならば、改めて現金で渡す必要はありません。報酬に見合った遺産分を、他の相続人より多めに取得できるよう調整する方法があります。
なお、次の遺言執行費用は報酬に含まれません。
・相続財産管理費用
・不動産の移転登記費用
・預貯金の解約・払戻の費用
・相続財産目録の作成費用 等
遺言執行の際にかかった費用を遺言執行者が負担した場合、これらの費用を報酬に上乗せして支払います。なお、遺言執行者と協議し、遺言執行費用の全額やその一部を前払いする方法もあります。
遺言執行者の報酬を支払えない場合はどうしたら良い?
遺言書に明記されていた遺言執行者への報酬が、遺産が少ないにもかかわらず、数千万円・数億円等とあまりにも高額ならば、相続人達は遺言執行者に辞退してもらうか、辞任を要求しても構いません。
遺言執行者が辞退・辞任しても遺言書に影響はありません。また、遺言執行者を立てなくても、相続人が手分けして遺言内容を実行することは可能です。
適正な報酬価格で遺言執行者に遺言を執行してもらいたい場合は、相続人で改めて話し合うか、家庭裁判所から遺言執行者を選任してもらうのも良い方法です。