財産分与とは? 離婚してからでも請求権はあるのか?
「財産分与」とは、婚姻生活中に夫婦で協力して得た財産を、離婚の際に貢献度に応じて分配する方法です。概ね分与の割合は共有財産を等分で分けて決着する場合が多いです。
財産分与の対象は、夫婦で協力して得た財産のため、夫婦が婚姻前に所有していたそれぞれの財産、両親等から相続や贈与を受けた財産等は対象外です。
具体的には夫婦で協力して得た、以下の財産が分与対象となります。
・金融:現金・預金、株式・投資信託・債券等
・不動産:土地・建物
・動産:家具・家電・自動車等
民法では離婚の際に財産分与の請求が認められています(民法第768条1項)。こちらは「財産分与請求権」と呼ばれ、夫婦が互いにこの請求権を行使し、相手に財産の清算・引き渡しを求めることが可能です。
財産分与の請求期限は何年? 「時効」と「除斥期間」の違いとともに解説
財産分与の請求は離婚成立日から2年以内であれば可能です。この期間は「除斥期間」と呼ばれ、期間経過後、離婚した相手側が任意で応じない限り分与の請求はできなくなります。
なお、離婚成立前に別居期間があったとしてもこの期間はカウントされません。
時効と除斥期間の違いは下表のとおりです。
除斥期間は、時効のように途中で停止または中断させることができない不変期間となっており、速やかな財産分与の請求が求められます。
請求期限の“延長”はできる? その対処法や10年の時効についても解説
ここでは財産分与請求の流れ、そして請求期限の延長方法について解説します。
財産分与請求の流れ
財産分与請求はまず離婚した相手方と話し合うのが最優先です。次の手順で進めていきます。
1.離婚した当事者で協議、分与内容で合意→財産分与契約書を作成する
2.話し合いが合意にいたらない→家庭裁判所に「財産分与調停」を申立てる
3.調停も不調に終わった場合、財産分与審判に移行→裁判官が財産分与方法を決定する
財産分与請求の協議や調停・審判は、離婚成立日から2年以内に行う必要があります。これらの方法で財産分与の請求権が確定した場合、この権利は10年間有効となります。
つまり、財産の引渡しを請求する権利は一般的な債権として消滅時効が10年となります。除斥期間ではなく消滅時効の期間になる以上、離婚した相手が財産を引き渡さないならば、裁判を提起して時効の中断(時効期間のカウントがゼロに戻る効果)が可能です。
離婚した当事者で協議して確定
離婚した当事者が話し合い、協議した分与内容で合意に達したら財産分与契約書を作成しましょう。契約書の作成自体は任意ですが、書面化していないと、当事者間で取り決めた内容が時間の経過と共に不明瞭となるおそれもあります。
財産分与契約書で明記すべき事項は法定されていませんが、次の内容を記載しましょう。
・契約当事者の氏名・住所・電話番号
・財産分与の対象となる財産
・財産の分与する方法・ルール(例:引渡期日等)
契約書を2通作成し、互いに署名・押印(認印でも可)して双方で大切に保管します。なお、公正証書とした方が公証役場に正本として保管されるので、契約書の紛失や内容の改ざんのおそれもありません。
調停・審判で確定
離婚した当事者で協議がまとまらないときは家庭裁判所に話し合いの場を設け、財産分与調停で解決を図ります。
こちらは裁判所の調停委員会(裁判官・調停委員2名)が当事者の話し合いを進める手続きです。申立ては、相手方が実際に居住している地域を担当する家庭裁判所または申立人と相手方で合意した家庭裁判所で行います。
財産分与調停の申立てに必要な書類は次の通りです。なお、家庭裁判所から追加の書類を請求される場合もあります。
・申立書原本及び写し:各1通
・連絡先等の届出書:1通
・事情説明書:1通
・進行に関する照会回答書:1通
・離婚時の夫婦の戸籍謄本:1通
・夫婦の財産に関する資料:不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金通帳写し等
・その他:収入印紙1,200円分・郵便切手等
財産分与調停が不成立となった場合には、財産分与審判に移行し、裁判官が当事者双方の主張や事情も考慮し決定を下します。なお、調停・審判を行っている中で除斥期間が過ぎても、それが原因で手続きは終了しません。