(写真はイメージです/PIXTA)

東京証券取引所は、当面の間としていた経過措置の終了時期を明確にしました。それに伴い、経過措置適用企業は本来の上場維持基準が適用されるようになります。ニッセイ基礎研究所の森下千鶴氏によるレポートです。

1―はじめに

東京証券取引所は1月30日に、「上場維持基準に関する経過措置の取扱い等について」(制度要綱)と「上場維持基準に関する経過措置の取扱い等の概要」を公表した。今回の公表内容に従って、2023年4月1日から経過措置に関する制度の見直しが順次実施される予定である。今回の制度見直しの注目点は、プライム市場等の上場基準に満たなくても暫定的に上場を認める経過措置を、2025年3月以降に順次終了していくことである。これまで経過措置の適用期間は「当分の間」とし、終了時期を明確に示していなかった。

 

本稿では、まず東証が公表した経過措置に関する制度の見直しについて概要を整理したうえで、経過措置を適用したプライム市場上場企業について、2023年1月末時点の進捗状況を確認した。

2―明確にした上場基準の形骸化が懸念されていた

東証は2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3つの新市場区分に移行し、各市場のコンセプトと上場基準を以前より明確にした。移行する際、既に東証に上場していた企業に対しては、新しい上場基準に満たなくても各市場に上場することができる経過措置が設けられた(図表1)

 

【図表1】
【図表1】

 

2022年12月末時点で、経過措置適用企業はプライム市場で269社、スタンダード市場で200社、グロース市場で41社と、各市場の1~2割を占めている。この経過措置の適用期間の期限がこれまで設けられなかったため、明確にしたはずの上場基準の形骸化が懸念されていた。

3―経過措置は2025年3月以降順次終了

今回の東証が公表した内容によると、2025年3月以降に到来する基準日から、すべての上場企業に対して本来の上場維持基準が適用されることになる。基準に抵触した企業は、1年間(売買高基準は6ヵ月間)の改善期間が設けられた後、監理・整理銘柄に指定され、その後原則6ヵ月間で上場廃止となる。3月本決算企業であれば、実質的な猶予期限は2026年3月になる。

 

しかしながら、この取扱いの救済措置はある。経過措置適用企業の中には、市場再編時に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示し、自主的に基準達成の計画期間を定めていた企業も多い。こうした企業の中で、2026年3月以降に計画期間を定めている企業については、既に定めた計画期間における適合状況を確認するまで監理銘柄として市場に残ることができる見込みである。

 

また別の救済措置として、市場再編前に市場第一部に所属していたプライム市場上場企業を対象に、2023年4月1日~9月29日までの6ヵ月間は審査なしでスタンダード市場へ移行できる機会が設けられる。期間中にスタンダード市場への移行を選択した企業は、2023年10月20日に上場市場の変更が実施される。上場基準との乖離が大きく基準達成が難しい企業は、引き続き基準達成を目指すか、救済措置を利用してスタンダード市場への移行を選択するか9月までに判断がせまられる。なお、スタンダード市場及びグロース市場上場企業には同様な措置はない(図表2)

 

【図表2】
【図表2】

 

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次ページ4―経過措置適用企業の基準達成に向けた進捗状況

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年2月16日に公開したレポートを転載したものです。

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