5―干ばつリスクの管理
前章までに見たとおり、世界的に干ばつのリスクが高まっている。その管理についても、活発な議論が行われている。ヨーロッパでは、監視、評価、対応の3つの柱を掲げて
、取り組みが進められている。本章では、この3つの柱を簡単に見ていこう*10。
*10:本章は、“Three Pillars of Integrated Drought Management”(Integrated Drought Management Programme)を参考に筆者がまとめた。
1.ヨーロッパでは干ばつを監視するための組織が設置されている
第1の柱は、干ばつの監視・早期警戒システム。干ばつ状態を監視して、早期に警告を発することは、干ばつリスク対応の基礎といえる。
気候と水資源のトレンドを特定し、干ばつの発生やその可能性、さらに深刻度合いや影響を検出する。適切なコミュニケーションを通じて、信頼できる情報を、水資源・土地の管理者、政策立案者、一般市民に適時に伝達することが求められる。ヨーロッパでは、欧州委員会のもとに、「欧州干ばつ観測所(EDO)*11」という、干ばつを監視するための組織が設置されている。ヨーロッパで深刻な干ばつ事象が発生した場合には、報告書が作成、公表されている。
*11:EDOは、European Drought Observatoryの略。
2.干ばつに対する脆弱性と影響を評価して理解を向上させる
第2の柱は、干ばつに対する脆弱性や影響の評価。干ばつに関連する過去から現在、そして将来の影響を見通し、これらに対する脆弱性を評価する。この評価は、干ばつに対する自然や社会の弱点を特定し、発生する影響の理解を向上させることを目的としている。つまり、何が危険にさらされているのか。どうして、どのように危険にさらされているのか、を明らかにするものと言える。
3.干ばつリスクの低減のための行動を決定する
第3の柱は、干ばつの緩和、準備、対応に関連する諸作業。リスクの低減を目的とした適切な行動を決定し、干ばつの始まりから終わりまでの間に、段階的に導入・廃止されるべき行動を示す。特に、短期的な行動については、実施に向けた適切なトリガー(発動基準)を特定する。また、併せて、リスク対応を円滑に実行するための、各種機関や省庁、組織を特定する。
6―おわりに (私見)
本稿では、気候変動問題のうち、干ばつの発生状況やリスクについて見ていった。日本は、ほぼ全域が湿潤気候に属しており、深刻な干ばつリスクを身近に感じる機会が少ないものと考えられる。しかし、海外では、気候変動問題のリスクの1つとして、干ばつリスクへの対応が進められている。
食料を海外からのに輸入に大きく依存する状況では、日本も干ばつの影響から逃れられない。干ばつリスクを回避することは困難と言える。
CO2排出削減など、地球温暖化をはじめとする気候変動問題への対策を進めるにあたり、干ばつの発生状況やリスク動向にも注意していくことが必要と考えられる。今後も、干ばつリスクについて、注視していくこととしたい。
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