ライフプランに合った年金の受け取り方とは
◆年金で受け取るのは本当に不利なのか
控除される金額は、受け取る年金額によって異なりますが、たとえば、65歳未満の場合は年金額130万円未満なら控除額は60万円、65歳以上の場合は年金額330万円未満なら控除額は110万円です。
公的年金等控除は、その年に年金で受け取るお金すべてを合算したうえで適用されるものです。企業年金を受け取るタイミングで公的年金やiDeCoの年金受け取りがある場合は、それらの金額を合計し、65歳未満なら60万円以上、65歳以上なら110万円以上になると雑所得として課税されます。
課税所得が多いと健康保険料や介護保険料が高くなり、医療費の窓口負担割合も増える場合があります。
このように、受け取り方によって所得控除額が変わるため、控除が多い「一時金受け取りが得」で控除が少ない「年金受け取りは損」といわれるのです。
ただし、これも、公的年金と企業年金の受け取り時期をずらし、iDeCoを一時金で受け取るといった工夫もできます。そのほかにも、医療費控除やふるさと納税など、所得税や住民税が安くなる制度を併せて使えば、税負担を軽くすることもできるでしょう。
また、年金受け取りには、一時金受け取りにはないメリットもあります。それは、確定給付企業年金(DB)など受け取り金額が決まっているタイプでは、年金を受け取っている間に残りの年金資産が運用されるため、「給付利率」と呼ばれる利息がつくのです。
そのため、受取総額が一時金でもらうより多くなります。給付利率は会社によって異なりますが、2.5%前後の利息がつく場合が多いようです。なかには、5.5%といった破格の金利がつく会社もあります。
◆一時金か年金かはどう決めるのが正解か
たとえば、退職金を一時金でもらった場合、メガバンクの大口定期(10年)に預けても、利息は0.002%です。かといって、投資信託や株で運用してもうまくいくかどうかわかりません。
そうした場合、自分で退職金を管理するより、会社にまかせて分割でもらったほうがはるかに安全で有利です。
退職金や企業年金を受け取るにあたってもっとも大切なのは、「必要に応じて受け取り方を考える」ということ。手取り額が多くなるとか、税金が安くなるといった一部の情報だけに惑わされないようにしましょう。
たとえば、「退職金で住宅ローンを一括返済する」という計画がある人は、一時金で受け取ったほうが都合がよいと思います。一方で、「公的年金を受け取るまでの5年、あるいは10年間の生活費のつなぎ資金として使いたい」という人なら、年金で受け取ったほうがライフプランにフィットするでしょう。