過去5年分を遡って取り返せる「更正の請求」
過去に確定申告、年末調整において申告しなかったものがあれば、「更正の請求」という制度を利用することにより、過去5年まで遡って、税金を計算し直すことができます。
その結果、払いすぎた額があれば「還付」という形で取り戻すことができます。
申告しなかった典型的なケースは以下のようなケースです。
・控除等の税制優遇の制度自体を知らなかった、または受けられないと誤解していた
・うっかり申告を忘れていた
・領収書やレシート等の資料を紛失してしまった(あとで出てきたか再発行してもらえるものだった)
数万円の税金を無駄に払いすぎている可能性があり、申告しなかったことによる損失は深刻なものになりかねません。
思い当たる方は、ぜひ、「更正の請求」を利用することをおすすめします。
知らないまま控除していないことが多い3つの制度
「うっかり申告を忘れていた」「領収書やレシート等を紛失してしまった」というのはともかく、特に深刻なのは、「控除等の税制優遇の制度自体を知らなかった、または受けられないと誤解していた」というケースです。
なぜなら、税制優遇の制度は必ずしも周知徹底されているわけではないし、制度が変更されたり新設されたりことがあるからです。
以下、盲点となりかねない制度を3つ紹介します。ピンとくるものがないか、確認してください。
◆盲点1|ひとり親控除
ひとり親控除は、2020年分から導入されたばかりの新しい制度です。
子育てをするシングルマザーあるいはシングルファザーであれば、所定の要件にあてはまれば、基本的に誰でも35万円の所得控除を受けられる制度です。婚姻歴の有無に関係なく、受けられます。
要件は以下の通りです。
・婚姻をしていない、あるいは配偶者の生死が不明
・生計を一(いつ)にする子がいる
・子の所得の合計額が48万円以下
・合計所得金額が500万円以下
・内縁配偶者がいない
かつては「寡婦控除」「寡夫控除」といって、婚姻歴が要求されていました。最初からシングルペアレンツだった人は受け取れなかったのです。しかし、それでは不公平・理不尽であるということで、2020年分から導入されました。
なお、「ひとり親控除」の新設に伴い「寡夫控除」は廃止され、「寡婦控除」は残ったものの事実上、きわめて限られた場面でのみ機能することになりました。
婚姻歴の要件が不要になったことを知らない人はまだまだいると想定されます。35万円の所得控除は大きく、申告しないことによる損失は文字通り深刻ですので、あてはまる方はぜひ、すみやかに「更正の請求」の手続きをとってください。