(写真はイメージです/PIXTA)

国際的な指標であるNY金先物は昨年秋以降、米物価上昇率の低下を背景に急上昇。また、国内金先物もNY金の上昇を受けて過去最高値(8129円)に近い水準で高止まりしています。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏が勢いづく金相場について解説します。

1. トピック:金価格は史上最高値を突破するか?

金相場が勢いづいている。国際的な中心指標であるNY金先物価格(中心限月・終値)は2月2日時点で1トロイオンス1930.8ドルに上昇しており、2020年8月6日に付けた過去最高値である2069.40ドルまであと100ドル余りに迫っている(表紙図表参照)。また、国内の金先物価格(大阪取引所金標準先物・中心限月・終値)についても1グラム8054円と、22年4月19日に付けた過去最高値の8129円に近い水準にある(本日時点では7900円台へやや下落している)。

1)NY金先物の動向と見通し

◆昨年以降、NY金は大きく上下

【図表1】
【図表1】

 

まず、NY金について昨年以降の動きを振り返ると、上下に大幅な変動が起きており、主に3つの局面に分けられる(図表1)

 

まず、昨年年初から3月上旬にかけてのNY金は急騰した。ロシアがウクライナに侵攻し、欧米が対露制裁に踏み切ったことで世界経済の先行き懸念が急激に高まったためだ。米株式市場の警戒感を示すVIX指数もこの時期に上昇している。この結果、安全資産としての金需要が高まり、NY金は2000ドルの節目を一旦突破、過去最高値に接近した。

 

しかし、その後、3月中旬から10月末頃までは一転して下落トレンドとなった。その直接的な原因は米国の金融政策にある。コロナ禍からの経済活動再開や、制裁を受けるロシアからの食糧・資源供給の途絶懸念などから米国でインフレが加速し、その対応としてFRBは急ピッチの利上げを実施した。利上げによって米市場金利が上昇したことで、保有しても金利の付かない金の相対的な魅力が大きく損なわれて金売りが優勢となり、NY金先物は一時1600ドル台前半に落ち込んだ(図表2、図表3)

 

【図表2】【図表3】
【図表2】【図表3】

 

利上げの背景にあるインフレの加速はインフレに強い実物資産である金の魅力を高めたものの、金利上昇による悪影響が上回った形だ。実際、米長期金利(10年国債利回り)から市場の予想物価上昇率であるブレークイーブン・インフレ率(10年物)を差し引いた実質金利(10年物)は3月から秋まで上昇が続いた。実質金利の上昇は、金にとってプラス要因であるインフレ(予想)を加味した上での金利であるため、金利の付かない金にとって正味の押し下げ圧力になる。

 

【図表4】
【図表4】

 

また、米国の金利上昇によってドルの投資妙味が高まり、為替市場でドル高が進行したこともこの間の金価格押し下げに繋がった。主要通貨に対するドルの強弱感を示すドルインデックスは3月から10月にかけて約2割も上昇し、ドル建て表示であるNY金先物の割高感を強めた*1(図表4)

 

一方、その後昨年11月以降、足元にかけてはNY金が再び大きく上昇し、既述の通り、過去最高値が視野に入る水準にまで持ち直している。11月初旬から足元にかけての上昇幅は実に約300ドルにも達している。

 

この再上昇の原因も米金融政策にある。米国の物価上昇率が夏場を境にピークアウトし、低下を辿るにつれて、市場では早期の米利上げ停止やその先の利下げの開始が織り込まれ、米長期金利が低下に転じた。この結果、実質金利も低下し、NY金の追い風になった。さらに、米金利の低下を受けて為替市場でドル安が進んだこともNY金の割高感を後退させ、価格の持ち直しに寄与した(図表5、図表6)

 

【図表5】【図表6】
【図表5】【図表6】

 

*1:ドルを自国通貨としない国・地域の居住者にとっては、NY金のドル建て価格が同じでも、ドル高が進めば自国通貨建てで見た場合の割高感が強まる。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年2月3日に公開したレポートを転載したものです。

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