2)国内金先物の動向と見通し
◆昨年の国内金上昇は円安が原動力に
次に国内の金先物価格の動きを振り返ると、国内金先物(大阪取引所金標準先物・中心限月・終値)は昨年前半に急騰し、既述の通り、過去最高値となる8129円を付けた(表紙図表参照)。円建てである国内金先物価格は、NY金先物価格とドル円レートの影響を強く受け、「NY金先物(ドル建て・グラム当たり)×ドル円レート(円/ドル)」の値に近似する。昨年前半には、ウクライナ情勢の緊迫化を受けてNY金先物が上昇したうえ、米国の利上げ開始・加速を受けて円安ドル高が進んだことで、国内金先物の上昇が増幅された。
その後、昨年後半以降も国内金先物価格は最高値に程近い水準で高止まりを続けている。昨年秋にかけてはNY金先物が大きく下落し、国内金先物にとっても下落圧力となった。しかし、急ピッチの米利上げと日銀の金融緩和維持を受けて大幅な円安ドル高が進行したことで、NY金下落の影響が相殺された。一方、昨年秋以降は、既述の通り、NY金が急速に持ち直したものの、米利上げ観測の後退や日銀の緩和修正を受けて円高ドル安が進んだことで、上値が抑えられる形になっている(図表8)。
◆国内金は円高が上値を抑制へ
国内金先物の先行きについては、NY金と比べて上値の重い展開が予想される。今後とも円高ドル安の進行が国内金の上値を抑える展開が見込まれるためだ。
今後想定される米利下げの織り込みはNY金先物の上昇を通じて国内金先物の押し上げ圧力となるものの、同時に円高ドル安を促すことで上昇圧力が抑制される。さらに、今後も日銀の緩和修正観測が円高ドル安要因になると見込まれるが、日銀の緩和修正観測がNY金に与える影響は限定的であるため、日銀発の円高圧力は素直に国内金の押し下げ圧力になると考えられる。
国内金先物の足元の価格は既に過去最高値に肉薄しているうえ、既述の通り、NY金の上昇基調は続くと見られるため、年内に過去最高値の更新もあり得る。ただし、円高ドル安の進行が重荷となるため、大幅な上昇は見込みづらい。
そして、とりわけ警戒が必要になるのは日銀の動きだ。昨年末の突然の緩和修正によって日銀による情報発信の信頼性が低下し、金融政策の不透明感は強まっている。日銀が今後大幅な緩和修正に動き、急激な円高ドル安が進む場合には、国内金先物は下落に転じることになるだろう。
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