(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、需要が高まるなかでもなかなか供給が追いつかない理由として、医療業界の「致命的なデジタル化の遅れ」があると、ねりま西クリニックの大城堅一院長は指摘します。日本の医療業界が抱える根深い問題をみていきましょう。

情報化がものすごく遅れている日本の医療界

関係機関との連携では患者の情報共有も重要になります。この情報共有に関しても課題は少なくありません。

 

日本の医療界は世界に比べてもデジタル化が大きく遅れています。新しく設立された基幹病院や大学病院クラスは電子カルテや独自の情報共有システムをもっていますが、小規模クリニックでは紙のカルテに記録し、関係機関との情報共有は電話やファックスという、数十年前からほとんど変わらないスタイルが大半を占めています。

 

さらに国別の電子カルテの普及率を見ると、北欧諸国は100%、ドイツが90%、アメリカが67%と進んでいるのに対し、日本は半数以下の40%にとどまっています。

 

さらに他国に比べ、保険・介護などのデータが各機関で分断されており、医療・介護等のヘルスケアデータの連携が進んでいないと指摘されています(Harvard Business Review2022.02.25)。

 

新型コロナの患者数集計でも検査をした医療機関から保健所にファックスで送るという方法が主流であり、先進諸国からまだファックスを使っているのかと驚かれたと聞きます。

 

こうしたデジタル化の遅れにより、医師たちはカルテの記録や情報共有のための書類仕事に膨大な時間を奪われています。

 

特に在宅医療では医師や看護師が病院に常駐しているわけではありません。患者宅を訪問して移動を繰り返していますから、関係機関との連携でもスタッフ間の情報共有でも、紙の書類の記録や共有のために、毎回クリニックに戻らなければいけないのでは、負担が大きくなるばかりです。

 

今後より多くの在宅患者を支えるためにも、医療関係者の長時間労働解消のためにも、ICT(情報通信技術)を活用した効率的な情報共有の仕組みを、早急に整えていく必要があります。

 

 

大城 堅一

医療法人社団星の砂 理事長

ねりま西クリニック 院長

 

《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら

※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録