具体性のある分かりやすい話を聞きだす
■必要な情報を集めるための深掘りポイントは?
面接で候補者から集めるべき情報は、ゆるぎのない「事実」で、多くの場合で「過去のエピソード」になります。
どのような環境の中で、どのような問題が発生し、それに対してどのように思考して、どのような対策を実行したのか。そして、どのような苦労を乗り越えて、最終的にどのような結果を得たのか。これを埋めていくようにエピソードを聞けばよいのです。
この際に、注意すべきポイントは「具体性」です。候補者の多くは、自分の話を抽象化し、構造やポイントのみシンプルに語ろうとするからです。
どうやら、候補者と面接担当者では「わかりやすい」という言葉の意味が違います。候補者は、自分がやってきたことをなるべく抽象化してシンプルに、細かいことを省いて骨子のみを語ることで、相手にすぐ理解してもらおうとします。
しかし、候補者の話は抽象化すればするほど、どの話も似てくるわけで(極論、「何か問題があって、工夫して解決したら、よい成果が出ました!」となる……)、骨組みだけ聞いても候補者本人に対して何のイメージもできないことでしょう。面接担当者にとっての「わかりやすさ」とは、候補者が話しているエピソードが頭の中にきちんと「イメージできるか」ということです。
抽象的な話を聞いても、頭の回転が早く想像力豊かな面接担当者であれば、相手の話をイメージできるでしょう。しかし、でも触れましたが、実はそれが最もやってはいけないことです。
面接では「相手が言ってないことは、聞いていない」というのが重要で、相手が話すまで、思い込みや願望が入り込む勝手な想像で話の隙間を埋めてはいません。そのため、面接担当者にはある意味しつこさが必要です。一度聞いて相手が答えてくれないようであれば、再度尋ね続けましょう。
例えば新卒採用の面接で「アルバイトは何をしていましたか」と聞くと、統計的に多くの候補者は「飲食店です」と答えます。
しかし、これではほぼ何もわかりません。すかさず、「どんな飲食店ですか?」「外資系のコーヒーチェーンです」「それはなんというチェーンですか」「スターバックスコーヒーです」……と、できれば固有名詞が出てくるぐらいまでしつこく聞かなければなりません。
さらに言えば、「どんなスタバのお店でしたか」「東京駅の構内にある、毎日千人以上お客様が来る、とても忙しいお店でした」とまで聞ければ、ほぼ完璧です。ここまで聞ければ、「ああ、そんな忙しい店をわざわざ選んで頑張っていたんだなあ」とイメージが具体化していくのです。
•相手が話すまで、勝手な想像で話の隙間を埋めない。
•固有名詞が出てくるぐらいまでしつこく、具体的に聞く。
曽和 利光
株式会社人材研究所 代表取締役社長