実家暮らし長男を襲ったまさかの事態
相続のシーンでは、故人の遺産をめぐりドロ沼の争いになることが少なくありません。特に不動産の相続は平等な分割が難しいため、相続人の間で不平不満が噴出してしまうことも……。
たとえば下記のような例。自分事ではなくとも、親戚や友人で身に覚えのある人はいないでしょうか。
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〈加藤一家の事例〉
加藤義男さん(仮名)。55歳独身、地方公務員です。高校卒業後は上京し都内の有名大学に進学しましたが、卒業と同時に帰郷。地域を支える市役所職員として、真面目に働いてきました。
結婚を考える相手もいましたが、縁は実らず、現在まで独身です。父は10年前に他界。高齢で一人暮らしになった母を気遣い、5年前から実家で暮らしています。
義男さんには妹がいます。50歳・専業主婦の佳代子さん(仮名)です。佳代子さんは東京近郊の郊外で夫・娘・息子と4人で暮らしています。実家に帰省することは滅多になく、加藤さん一家が顔を合わせるのは数年に1回あるかないかです。
仲が良くもなく、悪くもなく……と微妙な関係が続いていた兄妹でしたが、事態が一変したのは1年前のこと。母の急死でした。
80歳を超えていた母・ヨシヱさん(仮名)。数年前から軽度の認知症傾向にありましたが、大きな問題となることはありませんでした。しかしある日、食事をのどに詰まらせて救急車を呼ぶ騒ぎに。誤嚥性肺炎を起こしてしまったのです。
若いころからタバコを好んでいたこともあり、肺が非常に弱かったヨシヱさん。みるみるうちに身体が弱っていき、長男、長女に看取られながら静かに亡くなりました。
父すでに他界しているので、相続人は義男さんと佳代子さんの2人だけです。遺言書はなく、残されたのは自宅と預貯金500万円でした。
葬儀後まもなく、遺産分割について話し合いの場が設けられましたが、そこで思わぬ展開になります。双方の意見に食い違いが生じたのです。