「頭の良さ」は生まれつき決まっている!?
勉強ができる子とできない子、その差は何で生まれるのでしょうか。ある人たちは、生まれもった遺伝子のためだと言います。頭の良さは生まれつき決まっているので、頑張ってもある程度までしか伸ばせない、というメンタルセットです。
ある人たちは、環境、経験、学習方法によるものだと言います。やり方を工夫し、正しい方法で努力すれば、学力はどんどん伸ばせるというメンタルセットです。実際は、生まれつきの遺伝子もある程度影響するけれど、生活環境や学習方法もある程度影響するという、中立のメンタルセットをもつ人が大多数のようです。
私は、小さい頃は生まれつきの要素が強いように思います。身体の大きな小学生はカが 強くて運動では有利なのと同じで、生まれつき人より暗記が得意な小学生は九九を速く言 えるでしょう。
しかし、成長していくにつれ、継続して努力しているか、正しい方法で行っているかな ど、後天的な要素がものをいうようになってきます。脳は、使えば使うほどその領域の神経が発達するため、生まれつき暗記が得意な子よりも毎日繰り返し九九を勉強していた子の方が、いつの間にか掛け算が速くなるのです。
そもそも勉強は「知っているか知らないか」という要素も多分にあります。これに関しては、完全に後天的な経験の有無によるものです。私は高校 2 年生まで、英語の長文を読もうとしてもほとんど内容が理解できませんでした。
テストで初めて見る単語が出てくると、ほとんど勘で答えるしかなく、ひどい点数ばかりとっていました。しかし、受験のときに英単語を一つひとつ根気よく覚えていくにつれて、読むスピードもどんどん速くなり、段々と初見の長文でも書かれていることがわかるようになったのです。テストでもしっかり内容を把握したうえで解答することができるので、正解率もぐんと上がりました。
必要な知識さえ頭に入れておけば、東大にも受かる
一方で、受験に必要なかったとはいえ地理の勉強をまったくしなかった私は、いまだに 都道府県の場所と県庁所在地を全部言えません。山脈の名前もわかりません。もはや常識がなきすぎるという話かもしれませんが、地理に関しては、中学生、下手をしたら小学生の方が私よりもできるでしょう。
私は、はっきり言ってこの「知っているか知らないか」の要素が、受験のほとんどの部分を占めていると思っています。「この人は勉強ができるな」と感じる人は、ただ単に自分の知らない範囲の知識まですでに知っているだけだったりします。
つまり、難関大学に合格できるかどうかは、完全に後天的なものに起因すると考えています。そもそも、遺伝子で決まると思われている知能の基準「IQ」を開発したフランスの心理学者アルフレッド・ビネー自身が、「知能は後天的な要素が大きい」という考えの支持者なのです。
ビネーは、パリの学校で勉強についていけない子どもたちに、特別な教育をして周囲と同レベルに戻そうとしました。そのときにつくられたのがIQ検査です。彼は、後天的な学習により成績を改善できることを強く主張しました。
先に書いたように、「神経を繰り返し活性化させることで、その領域が発達していく」 ということは科学的にわかっています。また、知能研究の大家であるロバート・J ・スタンバーグも「高い専門性は、生まれつき備わった固定的なものではなく、目的に即してどこまで伸ばしていけるかによる」と言っています。
つまり、大学に受かるための(専門的な)学力は、過去聞を見てその大学が求める方向に即し、どこまで努力できるかによる、ということです。たとえ都道府県の場所がわからなくても、必要な知識さえ頭に入れておけば東大に受かるのですから。