不動産利回りに影響する「長期金利」は低下傾向
前回は、サンフランシスコ・ベイエリアの不動産市況に影響を与えていると思われる特徴的な要因のいくつかを、2016年第2四半期までの数字で追ってみました。今回はその結果、サンフランシスコ・ベイエリアの住宅系不動産市況がどうなったのかを見てみます。
その前に、不動産利回りに影響を与える長期金利(10年物米国国債の利回り)の動向を見てみましょう。
[図表1]長期金利の動向
昨年12月に、FRBが金融緩和から引き締めへの方向転換を行ったものの、中国・欧州問題等の影響からか、2%台から1%の半ばあたりまで、国債利回りは低下傾向にあります。日欧がマイナス金利導入に引きずられる形で、米国債も利回り低下となりました。
来週20〜21日に行われるFED政策決定会合で、今月の利上げ
イーストベイ・ペニンシュラが価格引き上げを牽引
2015年後半から軟調地合いが続いていましたが、2016年第2四半期は一転反転してリーマン危機前のピーク(66万5000米ドル)を越し、新高値を記録しています。ただし、中身を見てみると、地域・価格帯によって格差があることが分かります。
[図表2]中間住宅価格推移
それでは、サンフランシスコ・ベイエリアの、どのサブマーケットが値上がりに寄与したかを見てみます。過去数年の値上がりを牽引してきたサンフランシスコ郡・サンタクララ郡は落ち着きを見せる一方、イーストベイ(アラメダ郡・コントラコスタ郡)地区と、ペニンシュラ地区が値上がりを持続しています。
[図表3]サンフランシスコ・ベイエリアの値上がり状況
さらに価格帯別に見ていきますと、サンフランシスコ・ベイエリア全地域で、100万米ドル以下の物件取引数が極端に減る一方、100〜300万米ドルの中間価格帯の取引が、比較的活発になりました。
サンフランシスコ・シリコンバレーでは、300万米ドル以上の高価格帯の取引量は減少したものの、イーストベイ内陸部(コントラコスタ郡)の高価格帯の取引量は増加しています。
[図表4]価格帯別で見る、サンフランシスコ・ベイエリア全地域の物件上昇率
戸建て市況は「調整局面入り」か
それでは、シリコンバレーのど真ん中にある、高級住宅が立ち並ぶパロアルト市がどのような状況となっているか見ていきましょう。
[図表5]パロアルト市戸建中間価格
Trulia社によればパロアルト市の直近中間価格推移は以下の通りです。
7/23 240万米ドル
7/30 237万5,000米ドル
8/06 240万米ドル
8/13 239万4,000米ドル
8/20 234万5,000米ドル
8/27 236万4,000米ドル
9/04 234万5,000米ドル
やはり高価格帯がほとんどを占めるサブマーケットでは、中間価格が230万後半から240万米ドルのレンジ内と、やや弱含んでいると言えましょう。
[図表6]S&Pケースシラー住宅指数(サンフランシスコ版)戸建住宅加重平均価値
S&Pケースシラー住宅指数はご存知の方も多いと思いますが、1990年時点の戸建て価値総合計推計を100とし、ほとんどの取引事例を参考として戸建て価値総合計を推計している指数です。サンフランシスコ版については、サンタクララ郡(シリコンバレー)を除く、サンフランシスコ周辺5郡を対象にしています。
1990年時点では2515億6200万米ドルの戸建て価値が、2016年6月で228.44(=5746億6800万米ドル)となったことを示しています。
また、投資家のためにこれらの10大都市の指数については、シカゴ・マーカンタイル先物市場で上場されており、これら指数が先物で取引できるようになっております。ちなみにこれら10大都市の中で、この26年間でサンフランシスコよりも価値が増加した大都市はロサンゼルスのみ(=249.67)となっています。
[図表7]過去6カ月のS&Pケースシラー住宅指数の動き
サンフランシスコについていえば、前回ピークはリーマン危機前の2006年5月(218.37)でしたが、すでにこれを2016年2月の時点で高値を更新し、この数カ月スローダウンしたとはいえ、6カ月連続で上昇中の状況にあります。
おそらく地域的にはイーストベイ・ペニンシュラ、価格帯としては100〜300万米ドルの住宅が上昇を後押ししているものと思われます。
この話は次回に続きます。