(※写真はイメージです/PIXTA)

医学部志望は「生物と物理」どっちを選択すべき? 本稿では、医学部専門予備校「京都医塾」の著書『偏差値40からの医学部逆転合格』(ラーニングス株式会社)より一部を抜粋し、理科の科目選択について解説します。それぞれのメリット・デメリットや、「向いている受験生」の特徴を見ていきましょう。

理科科目の選択、どうすべき?

医学部志望の方は、国公立大学、私立大学問わず、理科の選択についてどこかのタイミングで決定しなければいけません。入試科目の関係でも、化学はほぼ必須。地学を選択する方は少数かと思いますので、生物か物理、どちらを選択すべきかは悩みどころかと思います。

 

学校でも理科科目の選択をしなければいけない高校生の方はもちろん、高卒生であっても、高校の時に物理がまったく得点できなかったため、浪人を始めるにあたって生物に受験科目を変えようと思っているというご相談、またはその逆のパターンのご相談を受けることも多くなってきました。

 

まずは生物、物理それぞれのメリットデメリットについてご説明します。

「生物」を選択するメリット・デメリット

■生物を選択するメリット① 点数が安定しやすい

生物は複雑な計算を要する問題が少ないため、計算ミスによる失点が起こりにくいです。物理では、1つのミスが連鎖的な失点を招いてしまうケースもありますが、生物の計算問題では、設問が独立していることから1つのミスをきっかけに多くの失点を招くことは少ないと言えるでしょう。とはいえ、単純な計算ミスや漢字間違い、文字間違いが積もり積もって大量失点する可能性はあるので注意すべきです。

 

■生物を選択するメリット② 化学にも活かせる知識

高分子化合物で取り扱う分野のうち、天然高分子化合物の分野では、核酸や糖、タンパク質などは生物と化学、両方の科目でいかすことができます。天然高分子化合物は、暗記量や計算量も多く、毎年多くの受験生が苦労するところですが、あらかじめ生物を勉強しておけば復習感覚で授業に臨めるはずです。

 

■生物を選択するメリット③ 医学部入学後も役立つ

大学の医学部では分子生物学や生命科学を学習していきますが、これらの単元は高校生物の基礎があることでスムーズに理解することができます。物理選択者が困らないように基礎分野から授業は行われますが、生物選択者は、スタートの時点で多少楽をすることができるのです。

 

これだけ聞くと、生物は良いことずくめと思われるかもしれませんが、もちろんデメリットもあります。

 

■生物を選択するデメリット❶ 暗記量がかなり多い

問題を解く前提となる基礎知識の量は物理の数倍必要です。幅広い分野から出題される傾向が強いうえに、各分野をミックスさせた出題も多々あるため、広範囲の知識を体系的に整理して覚えておく必要があります。

 

また、医学と無関係な植物の内容などもあり、そもそも科目に興味がない生徒に関しては、知識習得の大きなハードルになります。

 

■生物を選択するデメリット❷ 読解力・記述力が必要

まず問題のリード文などが理科の他科目と比べて長く、読解力・スピードが必要です。

 

また、これは特に難関大学に多いのですが、記述問題の文字数がかなり多く、数百文字記述を課される問題などはざらにあります。こちらも、正確な知識に裏付けられた正確な文章を記述する力、あと単純に入試本番で制限時間内にバリバリ記述できる力が必要です。

 

■生物を選択するデメリット❸ 高得点が取りにくい

生物は、難関大学になればなるほど、マニアックな問題が増えます。専門分野の世界では常識的な知識でも、大学入試レベルの生物としては、非常に対応が難しい知識が出題されることもあります。

 

単純に知識を習得しても、漢字ミスでの減点や、用語を正確に記述できないと失点したりする落とし穴がたくさんあるため、満点に近い得点はなかなか難しい面があります。

物理を選択するメリット・デメリット

一方、受験において物理を選択するメリット・デメリットはどうでしょうか。

 

■物理を選択するメリット① 暗記量が少ない

物理は、他の理科科目に比べると単純な知識の暗記量は数分の1でしょう。公式の意味や使い方をきちんと理解しながら勉強を進めることができれば、生物ほど細かな暗記は必要ないので、比較的短い時間で各単元を網羅的に学習することが可能です。

 

■物理を選択するメリット② 高得点を狙いやすい

物理は、ミスをしなければ高得点を取りやすい科目です。また、①でも述べたように、少ない時間で一通り学習できるので、残った時間で学習を深められます。その意味でも高得点を狙いやすい科目と言えます。ただし、序盤の1つのミスが連鎖的な間違いにつながり、その結果として大きく失点してしまうことも珍しくありません。いわゆる、ハイリスク・ハイリターンな科目です。

 

■物理を選択するメリット③ どこの医学部も受験できる

医学部には、入試で物理が必須の大学があります。国公立大学に限りますが、例えば、九州大学や北海道大学、金沢大学などは2022年度現在、入試で物理が必須です。つまり、物理を選択しておけば、選択科目で志望校が制限されることがなくなります。

 

また工学系などと併願の場合は生物選択ができない場合も。しかし医学部の併願は、薬学部・歯学部が多いので、併願に関しては、あまり生物と差がない可能性もあります。

 

暗記量が少なく、少ない時間で全範囲網羅できて、しかも高得点が狙える。「これはとても良いのでは」と思われた方も多いのではないでしょうか? もちろんデメリットはありますから、しっかり確認してください。

 

■物理を選択するデメリット❶ 数学が苦手な人には向かない

物理には、ある程度の高い計算力が求められます。高校数学の基礎レベルの問題であればスラスラと解く程度の計算力は必要です。基本的な数学の問題を速く、そして正確に解く能力が乏しい人など、数学的な処理が苦手な人には物理は難しい科目と言えるでしょう。

 

■物理を選択するデメリット❷ 暗記だけでは通用しない

一般に、公式や解法の仕組みを理解せずただ丸暗記しただけの状態では、いくら演習を繰り返しても、少し捻った問題が出てしまうだけで手も足も出なくなります。そして、医学部の物理の試験では、そのようによく練られた問題が多く出題されています。したがって、単純暗記だけで満足な点数を取ることは、まず不可能です。

 

■物理を選択するデメリット❸ 大学に入ってから活用する機会が少ない

物理は、医学部に進学してから活用することが難しい科目です。例えば、生物の知識であれば解剖学や生理学、生化学、細菌学など広範囲に渡って応用が可能です。一方、物理は全体把握の能力が養われるといったメリットがあるものの、生物ほど進学後に活用する機会には恵まれません。

生物と物理、それぞれ「どんな受験生」に向いている?

生物選択と物理選択のメリット・デメリットをまとめると【図表】のようになります。メリット・デメリットが出揃ったところで、それぞれの科目選択に適性がある受験生とはどんな方か見ていきましょう。

 

出所:京都医塾著『偏差値40からの医学部逆転合格』(ラーニングス株式会社)
【図表】生物選択と物理選択のメリット・デメリット 出所:医学部専門予備校 京都医塾の著書『偏差値40からの医学部逆転合格』(ラーニングス株式会社)より

 

<生物選択が適している受験生とは?>

生物は高得点は難しいけれども得点を安定させやすい科目です。生物やヒトの身体に興味があり、能動的に大量の知識をこつこつ暗記・整理し続けられる真面目な受験生や、数学は苦手だが文章の読解や記述が苦ではなく、理科は点数を稼ぐというよりも点数を安定させることを優先し、他の教科で攻めたいという受験生に適した科目と言えるでしょう。

 

<物理選択が適している受験生とは?>

物理は効率よく全範囲を学習でき、満点を含む高得点が狙いやすい科目です。しかし、複雑な計算やリンクされた設問が多く、連鎖的に大量失点するリスクも。数学に得意意識があり、暗記が苦手で全体の学習時間を効率化したいという受験生や、物理で高得点を獲得して合格のための武器にしたいという受験生に適した科目と言えます。

 

これから理科の選択科目を決めるという現役生は、以上を是非参考にしてください。高卒生で、理科の得点の伸び悩みに困っており科目選択の変更を検討している受験生は、くれぐれも慎重に。これまでの学習がリセットされてしまうことに加えて、入試までに学習が完了するのか時間的な問題もあります。

 

 

医学部専門予備校 京都医塾

 

「教育は、一人のために生まれる。」を企業理念に、圧倒的合格率で「偏差値40からの医学部受験合格」へ導く医学部専門予備校。京大出身の社員講師を中心に全国に校舎を増やさず、京都にしかない独自の教育サービスを展開。

医学部の受験競争が激化し、合格には偏差値65以上が必要と言われるなか、入塾選抜テストを行わず、偏差値40台から受験勉強をスタートした生徒を毎年合格させている。

 

※本連載は、医学部専門予備校 京都医塾の著書『偏差値40からの医学部逆転合格』(ラーニングス株式会社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

偏差値40からの医学部逆転合格

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医学部専門予備校 京都医塾

ラーニングス株式会社

必死に勉強して、受験対策もして、過去問も沢山解いた。でも、思うように成績が伸びない、医学部受験に受からない…。そんな悩みをお持ちの受験生や保護者の方が増えています。医学部でも私立なら受かりやすいと言われていたの…

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