(※画像はイメージです/PIXTA)

政府が2022年12月に発表した「2023年度税制改正大綱」において、投資の運用益が非課税となる「NISA」の制度が拡充されることになりました。しかし、投資には先立つ「お金」が必要です。特に、いわゆる「就職氷河期世代」の非正規雇用で働く人々は厳しい状況におかれています。NISA拡充の陰でどのようなことが起きているのか、解説します。

NISAの基本的なしくみ

「NISA」は、一定の要件をみたす金融商品への投資によって生じた「売却益」や「配当金」等の「運用益」について非課税とする税制優遇措置です。

 

本来ならば約20%の税金がかかるところ、NISAを利用した場合、非課税となるのです。

NISA制度の拡充について説明する前に、前提として、現行のNISA制度について概要を説明します。

 

現行のNISAには「つみたてNISA」「一般NISA」があり、どちらか好きなほうを選んで利用することになっています。

 

以下、それぞれについて概要を説明します。なお、2023年度をもって廃止される「ジュニアNISA」がありますが、割愛します。

 

◆つみたてNISAのしくみ

「つみたてNISA」は毎月、10年~20年の長期にわたり一定額を、機械的に投資し続ける「積み立て投資」を前提としたものです。

 

現行制度下では、年間の非課税限度額は40万円で、期間は最長20年間(総額800万円まで)です。

 

投資対象となる金融商品は、「長期・分散・積立」によるリスク分散効果が大きい投資信託(インデックスファンド等)に限られています。

 

世界経済が好況・不況を繰り返しながら長期的には成長していくことを前提としたものです。

 

どんな人でも、「20年間」にわたって無心に積み立てることによって着実に資産を増やせる可能性が高いものです。したがって、20年間、何があっても取り崩さなくてよいくらいの余剰資金が月3.3万円(年間40万円分)ある人にとっては、非常に有益な制度といえます。

 

投資初心者や、何も考えたくない、ほったらかしにしたい人にはこの「つみたてNISA」が向いています。

 

◆一般NISAのしくみ

これに対し、「一般NISA」は、よりハイリスク・ハイリターンの投資も可能です。

 

現行制度下では、年間の非課税限度額は120万円で、期間は最長5年間(総額600万円)です。

 

投資対象となる金融商品は「つみたてNISA」より広くなっています。すなわち、「つみたてNISA」の対象である投資信託に加え、それよりリスクの大きい広範囲の投資信託や個別の株式も対象としています。

 

ある程度投資について経験・知識がありリスク許容度が高い人向けとなっています。

「税制改正大綱」でNISAはどう変わるか?

以上が現行のNISAの概要ですが、税制改正大綱によって、NISAは以下のように拡充されることになりました。

 

・「つみたてNISA」と「一般NISA」が一体化

・非課税期間の無期限化

・非課税枠の拡大

 

なお、もともと、現行の「つみたてNISA」は2042年まで、「一般NISA」は2023年までの時限措置ですが、新制度による改定に伴い、時限措置ではなく恒久的な制度となります。

 

◆「つみたてNISA」と「一般NISA」の一体化

新制度は「つみたてNISA」と「一般NISA」を組み合わせたような制度となります。現在はいずれか一方しか選べませんが、新制度は「1階部分」を現行の「つみたてNISA」と同じものとし、「2階部分」に「一般NISA」に似た制度をプラスできることになります。

 

◆非課税期間の無期限化

次に、非課税期間が「無期限」となります。

 

現行制度では「つみたてNISA」が最長20年、「一般NISA」が最長5年となっています。この期限を撤廃し「無期限」とすることで、1ヵ月あたり(または1年あたり)の投資額と投資期間を柔軟に設定できるようになるのです。

 

これにより、資金に余裕の有無に応じて投資額を変えたり、少額ずつごく長期間期間にわたって投資し続けたりといったことが可能になります。

 

◆非課税枠の拡大

最後に、非課税枠の拡大です。まず、NISA全体として以下の投資上限額が設けられます。

 

・年間の投資上限額:360万円

・生涯の投資上限額:1,800万円

 

さらに、投資上限額360万円が2の枠に分かれます。

 

・つみたて枠(上限年120万円):現行の「つみたてNISA」と同じ比較的低リスクの金融商品

・成長投資枠(上限年240万円):「つみたて枠」より広範な金融商品

 

なお、「成長投資枠」は「つみたて枠」と同じ金融商品に投資することもできます。

 

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