(※画像はイメージです/PIXTA)

2021年10月に行われた衆議院議員選挙において「1票の格差」が2.08倍だったことが「違憲」であるとして選挙の効力が争われた裁判で、本日(2023年1月25日)、最高裁判所が格差は「合憲」との判断を下しました。裁判所の判断がどのような枠組みに基づくものかということと、その問題点についてわかりやすく解説します。

「1票の格差」何が問題なのか?

まず、「1票の格差」の何が問題かについて解説します。これは、国会議員の選挙においては、「選挙区」の区割りの問題です。

 

すなわち、衆議院議員選挙においては、1選挙区から1名の議員を選ぶ「小選挙区制」と得票率に応じて政党に議席を割り振る「比例代表制」が組み合わされています(小選挙区比例代表並立制)。

 

また、参議院選挙については、原則として都道府県ごとに1名~5名の議員を選出する「選挙区選挙」と、上述の「比例代表制」が別々に行われています。

 

「比例代表制」を除くと、選挙区ごとに人口が異なるため、議員1名あたりの有権者数が異なります。その結果、「1票の格差」が生じるのです。

 

2021年10月の衆院選においては、1票の価値が最も高かったのは鳥取1区(鳥取市など)で、国会議員1名につき有権者数は23万959名でした。これに対し、最も低かったのは東京13区(足立区の一部)で有権者数は48万247人でした。

 

鳥取1区の1票の価値は東京13区の2.08倍ということになります。

 

本件訴訟で争われたのは、1票の格差が2倍を超えていることが「法の下の平等」(平等原則、憲法14条)に違反しており、その状態で行われた選挙は無効でありやり直すべきではないか、ということです。

最高裁の判断枠組み

このような「1票の格差」に関する訴訟は、1960年代から繰り返されてきており、最高裁をはじめとする裁判所の判断枠組みはほぼ固まっています。以下の3段階で判断されます。

 

1. 「1票の格差」はどこまでいけば不平等状態になるか

2. 国会が「合理的期間」内に格差是正のための相当な措置をとったか

3. 選挙の効力の是非

 

以下、順を追って、最高裁の判断枠組みについて解説します。

論点1|「1票の格差」はどこまでいけば不平等状態になるか

まず、「1票の格差」はどこまでいけば不平等になるかという問題です。

 

2000年代までは、裁判所は、衆議院はおおむね3倍、参議院はおおむね6倍を超えると不平等だという判断を行う傾向がみられました。これは、区割りについて国会のある程度の裁量を重視し、人口以外の要素(都会と地方の地域格差等)をも加味することを認めたからです。

 

しかし、これに対しては、学者や法律家を中心に、国会議員は地域代表ではなくあくまでも「全国民の代表」(憲法41条)だから人口以外の要素を過度に重視するのはおかしいという根強い批判がなされてきました。

 

これを受け、2010年頃を境に、最高裁は人口比例を比較的厳格にみるようになっています。特に、選挙区が細かく「1選挙区1人選出」と分かりやすい衆議院の小選挙区については、おおむね「2倍」を超えた場合は不平等が生じているとみるようになってきています。

 

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