「着物業界の危機」40年で市場規模が“6分の1”に縮小も…呉服店を起業し売上を伸ばし続けた「手法」とは

「着物業界の危機」40年で市場規模が“6分の1”に縮小も…呉服店を起業し売上を伸ばし続けた「手法」とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今の相次ぐ物価上昇は一向に収まる気配がありません。そんななか、重要性を増しているのが「値上げして、適正な価格で販売すること」です。本連載では「感性と行動の科学」に基づいたビジネス理論を研究するオラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏が、著書『「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか』から、適正な「値上げ」をして、かつ売上を高める「戦略」について解説します。

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市場が6分の1に縮んでも……

マスターがいることで、お客さんはそれまで知らなかった世界を知り、それを楽しむようになり、「価値のわかる客」に育つ。するとおのずと、より高いものが売れるようになる。その典型的な例をお伝えしよう。会津若松の呉服店「庵 はづき」という店だ。

 

呉服市場は、1980年代の1兆8,000億円をピークに今や2,700億円ほどと、およそ6分の1にまで縮んだ。長年言われてきた「着物離れ」に加え、最近ではコロナ禍によって、成人式などただでさえ少なくなっていた呉服が売れる機会が減り、さらに苦境にある。

 

そんな中、同店は、平成13年に吉川恵美子氏が自らの呉服好きが高じて開業して以来、順調に売上を伸ばしてきた。

 

しかし同店に、たまたま着物好きや、暇とお金を持て余した方たちが集まっているのではない。それまで着物をまったく着ていなかった人や普通のOLも多い。吉川氏によると、お客さまからよく、「あなたに出会わなかったら、着物にこんなにのめり込むことはなかったわね」と、感謝交じりに言われるのだそうだ。

 

つまり彼女はマスターなのである。

 

そんな彼女は、「着物の楽しさを教えていくと、お客さんはどんどんのめり込み、目が肥えていきますね」と言う。とにかく良いものを見てもらうことが大事、と彼女は言うが、そこでは買うかどうかは二の次。「顧客を育てる」ことが重要なのだ。

 

その結果、より良いもの=高いものが売れていく店となる。

 

そんな同店を、着物作家や良い品を多く持つ有力問屋は強く支持し、それによりまた良い品が集まるようになる。そして顧客らはそれらを見て、時に作家から直接話を聞き、また目が肥えていく。

 

近年、同店では呉服だけでなく、お教室にも力を入れている。着付け教室はもちろん、茶道教室、香道教室、ピラティスの教室までと幅広い。

 

それも、「お客さんが、呉服とともにより美しく楽しく生きるために、必要なことを教えられるように」とのことだ。

 

どんどんと縮小している市場でも、人口が減っていく町でも、伸びていく店がある。

 

そこには「マスター」がいる。

 

そして、価値を運び、対価を得ながら、価値のわかる顧客を育てているのである。

 

 

小阪 裕司

オラクルひと・しくみ研究所

代表

 

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「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか

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