シビアな法人顧客に値上げを受け入れてもらうには?
「BtoB」(企業間取引)の世界においては、「BtoC」(一般消費者を対象とする取引)と比べ、価格交渉はよりシビアだ。
しかし、そんな「BtoB」の世界でも、価格アップを無理なく実現している会社はたくさんある。ここでもポイントは、「価格は価値に従う」だ。
静岡県島田市に「有限会社大塚製茶」という会社がある。「お茶のさすき園」という店舗も経営しており、「BtoC」事業でもファンが多い会社だが、「BtoB」事業でも業績を伸ばしている。具体的には、お茶の問屋やドリンクメーカーなどに対して卸販売を行っている。
近年、大塚製茶は卸単価の3割アップを果たした。そこで力を発揮したのが二つの資料。法人顧客に価値を伝えるためのツールだ。
一つはビジュアルが中心のもの。プロのカメラマンを使った本格的なものだ。もう一つは、大塚製茶の製品を使うことがエンドユーザーにどんな価値を提供するかを説くもので、こちらは分析や数値なども入った専門的なものだ。
社長・大塚隆秀氏は、この二つを巧みに使い分けている。まず、営業において最初に連絡があった企業には、ビジュアル中心のパンフレットを送る。大塚氏いわく、「あくまでも人が作るお茶、人が操作する機械、人が考えて活動している会社ということを表現しました」。パンフレットというより写真集といった趣のものだ。人は感情で動くものなので、まずはこれで大塚製茶の価値を感じてもらおうというわけだ。
ただ、ビジネスである以上、それだけで採用してくれるわけではない。そこでその先は理詰めで、データ中心の資料を使って価値を伝える。
ビジュアルなパンフレットを送ったあと、連絡があった会社には、この資料の第一弾を送る。内容は、「そもそもお茶は、お茶の細胞の中身を飲んでいる」といったお茶の基礎的な専門知識、大塚製茶の製造工程とそこでのこだわりなどだ。
そこから、さらに連絡や質問などがあれば、第二弾の資料の出番となる。そこにはかなり詳しく(というかマニアックに)大塚氏がこだわる土壌や肥料のことなどが、詳細なデータとともに説明されている。あわせて、さすき園店頭で来店客からよく聞かれる質問への回答が、こちらも専門的に語られている。
各資料がよく作られているだけでなく、まずはビジュアルパンフレット、次に専門的な資料の第一弾、その後、さらに詳細な第二弾と、シナリオがちゃんとできているのだ。
こうした施策により、顧客との関係が極めて強くなったと大塚氏は言う。そして目に見える結果として、今までは頻繁にあった値下げ要求が減り、それまでより価格の高い、より良い商品が売れるようになった。その結果、顧客単価が3割もアップしたのである。
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