「着物業界の危機」40年で市場規模が“6分の1”に縮小も…呉服店を起業し売上を伸ばし続けた「手法」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

昨今の相次ぐ物価上昇は一向に収まる気配がありません。そんななか、重要性を増しているのが「値上げして、適正な価格で販売すること」です。本連載では「感性と行動の科学」に基づいたビジネス理論を研究するオラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏が、著書『「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか』から、適正な「値上げ」をして、かつ売上を高める「戦略」について解説します。

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商売人はかつて、「マスター」だった?

私がずっと以前から提唱しているコンセプトがある。それが「マスタービジネス」だ。最初にこのことを書いたのは、2001年刊の書籍『失われた「売り上げ」を探せ!』(フォレスト出版)だから、もう20年以上も前になる。

 

マスターとは「師匠」のことである。当時、「お客様は神様です」などということが盛んに言われていた。商売人はお客さんをそれくらいの気持ちで扱うべき、ということだが、少し間違えると「商売人は顧客より下の存在である」とも取られてしまう。

 

だが、それは違うのではないか。売る側と買う側とは本来、対等であり、むしろ商売人は自分の商売の分野においてお客さんよりずっと詳しい。一方、お客さんはお客さんで、自分の知るべきことを知らずに苦労していたり、もっと楽しい世界があるのを知らないまま過ごしている。

 

ならば商売人はそれを解決すべく、顧客に有益な価値を提供する「師匠」であるべきではないか。その意味においては、お客さんは「弟子」と呼ぶべき存在ではないか。そのような思いが込められたのが「マスタービジネス」というコンセプトだ。

 

実際、本来の商売の成り立ちとはそういうものであったのではないかと私は考えている。

 

商売は物々交換から始まったと言われているが、その最初の形は、海の近くに住む人に対して、山に住む人が「こんなにおいしいキノコがあるよ」と伝え、それに対して海の近くに住む人が「この魚はこうやって食べるとおいしいよ」などと、教え合いつつ交換が行われていたのではないだろうか。もちろん、それを実証するすべはないが、私はきっとそうだったのではないかと考えている。

 

マスタービジネスとは同様に、「お客さんがまだ知らない価値を教える」ことによって、お客さんから対価を得ること。「マスター」とは、言い換えると「価値の運び手」だ。

 

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    オラクルひと・しくみ研究所 代表

    山口大学人文学部卒業(専攻は美学)。1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「感性と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会であるワクワク系マーケティング実践会を主宰。現在、全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。産官学にまたがり、年間数多くの講演・講義も行う。2017年からは、この理論と実践手法を全国の企業に広める事業が経済産業省の認定を受けている。『日経MJ』紙に14年に渡りコラム「招客招福の法則」を連載した他、著書は『「顧客消滅」時代のマーケティング』『「感性」のマーケティング』(以上、PHP研究所)、『価値創造の思考法』(東洋経済新報社)など多数。

    著者紹介

    連載「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか

    「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか

    「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか

    小阪 裕司

    PHP研究所

    価格を上げたらむしろ、顧客が増えた!? 迫りくる物価高の中、顧客離脱を起こさず、むしろ売上を増やす「正しい値上げ」の方法とは? 物価高が止まらない。多くの企業が原価高騰に苦しみ、値上げは不可避の状況になっている…

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