自ら進んで値下げを提案していないか
浜田氏はもう一つ、非常に重要なことを述べている。
以前は、顧客からの大量発注があった場合、顧客から「その分値引きできませんか」という話がよく来ていたという。そのため、大量発注があった場合には、何も言われなくてもこちらから値引きをした見積もりを出していたという。
しかし、このような活動を進めていく中で、それを止めてみた。すると、そのことに対して何も言われることなく、こちらの言い値で話が進んだのだという。
「安くすることがサービス」だと思い込んでいる人の中には、要望されてもいないのに「〇割値引きします」などとこちらから切り出してしまう人がいる。それはまさに「安売りのワナ」である。
「商品の差別化」による価値を生み難いのなら、「会社の差別化」により価値を生み、「価格」につなげる。そして、自ら値下げにいかない。この1年、同社ではその活動に注力してきたが、気づいたときには、今までは頻繁だった「相見積もり」が減っていた。
そして現在、浜田専務の担当分野の売上は3倍に、その後、全社に活動を広げる中で、顧客のリピート率は、取り組み前には実質1~3%だったものが、今では26%に回復している。
同様の取り組みを、長野県に本社を持ち、法人顧客への事務機器の販売・保守などを行っている「いとう」の社長、高村和則氏も行ってきた。具体的には、注文契約となった顧客一社一社に、手書きでひと言添えたお礼のハガキを送るなどのことだ。
当初、このような活動は、実店舗で主に個人を相手にした商売だからできることではないかと思っていた高村氏だったが、いざ自社でも始めてみると、成果は上がった。
そして4年半の取り組みの結果、これらの活動がおよそ1億円の粗利増につながっていると、高村氏は語る。
年商20億円の会社において、1億円の粗利である。
この浜田紙業やいとうの事例から読み取れる重要なことがある。
それは、法人顧客にとって、「関係性」は「価値」だということである。
小阪 裕司
オラクルひと・しくみ研究所
代表
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