(※写真はイメージです/PIXTA)

世界的な自動車メーカーであるトヨタに根付くビジネスの方法論は、各業界から注目を浴びています。社員1人1人が目の前の課題に対して「とことん考え抜く」ことを重要視しています。新卒でトヨタに入社し、独立後は社会人教育関連事業を展開、作家としても活躍する浅田すぐる氏が、トヨタ流「考え抜く」メソッドを解説します。

洗練された考えが思いつかないのは、「思考力」の不足ではなく「考える材料」の不足

「考え抜く力」というテーマのもと、1つ学び取ってほしいポイントがあります。

 

考え抜けないのは、「考え方」ではなく「考える材料」が頭にないから

トヨタの仕事の型、8つのSTEPに取り組む前に「考える材料」を集める、事前準備が重要

トヨタにおける仕事の定義は、次の8つのSTEPで構成されています。

 

「TBP(=トヨタ・ビジネス・プラクティス)8STEP」と言われていて、日本に限らず世界中の従業員がこれを学ぶのですが、この8つのSTEPは秘中の秘といった類のものではありません。書店に並ぶトヨタ関連本を紐解けば、だれでも学べる開かれた知見です。

 

本記事では、出版年が2019年と比較的新しい参考文献として、『ザ・トヨタウェイサービス業のリーン改革』(ジェフリー・K・ライカー、カーリン・ロス著/稲垣公夫訳/日経BP)に掲載されている文言を引用し、以降で活用していきます。

 

・STEP1:問題を明確に定義する

・STEP2:問題を分析し、分解する

・STEP3:改善の目標を設定する

・STEP4:真因を分析する

・STEP5:対策を立てる

・STEP6:対策を実行し、最後まで見届ける

・STEP7:結果とプロセスの両方をよく見る

・STEP8:うまくいったプロセスを標準化する

 

「型=考え方」を駆使して仕事に取り組む以前に、考える対象となる業務知識のほうが、当時の私には著しく不足していました。

 

これは社会人教育のフィールドで仕事をするようになってからより強く感じていることですが、「学びや成長への最難関は、最初の一歩目をいかに踏み出すことができるか」にかかっています。

材料がなければ、料理は決してつくれない

では、当時の私に何が起きていたのかというと、TBP(=トヨタ・ビジネス・プラクティス)のような考え方レベルの話ではなく、単に考えるための「知識=材料が圧倒的に不足していた」のです。

 

すなわち、考えがまとまらない・浅くなるのは、思考法ではなく思考材料の不足のほうに原因がある。みなさんはこの話、どの程度ピンとくるでしょうか?

 

私たちが「考えがまとまらない」「薄っぺらい考えしか出てこない」といって悩んでいるとき、その原因が思考力不足であるケースは、じつはあまり多くありません。

 

それよりも単に「材料不足」であることが根本原因であり、必要な情報や知識を仕入れて増やせば、あっさり解決してしまう場合が非常に多いのです。

 

料理でたとえれば、カレーのつくり方(TBPのような思考法)を知らないからつまずいているのではなく、カレーの材料(業務知識)が不足しているからつくれない。

次ページ問題解決のカギ「思考優位から、アクション重視へ」

本連載は、浅田 すぐる氏の著書『トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術

トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術

浅田 すぐる

日本実業出版社

世界のトヨタを支える、最大して最強の企業文化「考え抜く」を、トヨタ出身の「紙1枚!」シリーズで知られるベストセラー著者が解説。 著者がトヨタで学んだ、最大にして最強のスキル「考え抜く」とは、どういう状態なのか、な…

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