遺言内容と異なる遺産分割協議をしても問題ないか?
【相談内容】
横浜市在住の40代の会社員です。昨年父が亡くなり、自筆の遺言書が見つかりました。
遺言書には、横浜市内の自宅の不動産のことのみが書かれており、亡くなった父の預貯金や、遺言作成後に父が取得したほかの不動産についての記載がありません。
遺言書には、自宅不動産は母が相続するようとに書いてありますが、母も十分な資産を持っており、将来は施設に入所予定で自宅が不要になることから、母本人は、子どもたちに相続してほしいという意向を持っています。
遺言内容と異なる遺産分割協議をすることは可能なのでしょうか?
相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる分割も可能
【回 答】
遺言書で1人の相続人にすべての財産を与える旨が書かれていても、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる遺産分割をすることは可能です。
これは公正証書遺言であっても、自筆証書遺言で裁判所の検認を受けていたとしても、同様です。
実務では、被相続人の残した遺言書において、その内容が相続財産の一部しか記載されていないがために、その他の相続財産について遺産分割協議書のやり直しをせざるを得ないこともあります。
その場合、全相続人が合意の上であれば、遺言の内容と異なった遺産分割協議をおこなうことも可能とされています。仮に、遺言で遺言執行者が選任されていたとしても、遺産分割協議をおこなって遺産の分配を決めることができます。
なお、遺産分割協議をやり直した場合、税金が発生する可能性があります。いったんなされた遺産分割協議をやり直す、いわゆる「合意解除」の場合、新たな財産権の移転と見なされ、贈与税または不動産の所得税などを課される可能性があるということです(『相続登記をやり直したいが…「贈与税」「譲渡所得税」が課税されるといわれ、納得できない』参照)。
今回のように遺言書があった場合、相続人全員の合意で遺言書を撤回し、遺産分割協議をやり直すケースでも、遺言で一旦相続の効果が発生し、分割協議によって財産のやり取りをすることになることから、贈与税の問題が生じるのではないか、という疑問がよく寄せられます。
とくに「相続させる遺言」の場合には、相続発生時に当然に遺産分割の効果が生じるので、遺言書と異なる分割協議をすると、贈与税が発生するように見えます。
ただ、遺言書に記載された相続財産につき、相続人全員の合意により遺産分割協をおこなったのならば、これは贈与税または不動産の所得税ではなく、相続税での課税となるのではないでしょうか。
しかし、あくまで相続の実体などにもよりますので、この点は税理士などに確認をしておいた方がよいでしょう。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
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