(※画像はイメージです/PIXTA)

総務省は2023年1月18日、NHKが4月から受信料の不払いに対するペナルティである「割増金」を2倍にする旨の「放送受信規約」を認可しました。受信料制度についてはかねてから「憲法違反」との指摘もあります。そこで、受信料制度の是非について判示した最高裁判所の判例を取り上げ、その論理と妥当性、および今回の「不払い割増金2倍」ルールの合憲性について検証します。

「受信料不払い割増金2倍」を判例の基準で判断すると?

このような判例の判断枠組みを前提とすると、今回の総務省が「NHK不払い割増金2倍」を認めたことは、憲法上、どのように判断されることになるでしょうか。

 

不払い割増金を2倍にする「放送受信規約」は、受信料制度を維持するという目的に沿うものであり、正当ということになります。

 

また、「国会の議決」「総務省の認可」という所定の手続を経ています。

 

したがって、基本的には「合憲」と判断されざるをえないということになります。裁判所は、ことさらに内容の是非にまで踏み込むことができないからです。

 

しかし、判例の論理を根本で支えている前提は、NHKという公共放送局の公共性、非営利性、独立性、公正性といった特殊な位置づけです。それが国民の知る権利(表現の自由と表裏一体であり不可欠なものとされる)に資するからこそ、受信料の強制徴収の制度は正当化されているにほかなりません。このことは、NHKの受信料制度に対する賛否にかかわらず、当然の前提です。

 

その前提が崩れてしまえば、判例の論拠はたちまち失われることになります。

 

たとえば、NHKが時の政権や特定の政党に忖度するようなことがあってはなりません。しかし、2014年に当時のNHKの会長が、「政府が『右』というものを『左』というわけにはいかない」「(放送内容が)日本政府とかけ離れたものであってはならない」などと発言したり、政治家の圧力の存在が取り沙汰されたりするなど、NHKの存在意義の根幹にかかわるような不祥事・疑惑が起きています。

 

また、1950年の放送法制定当時は放送局の数が限られているうえテレビも普及していませんでした。しかし、それから70年あまりが経過し、今日では多チャンネル化・IT化が進み、テレビの役割・影響力が相対的に低下しています。そのなかで、NHKだけをことさら受信料制度によって支えるのは過度の優遇ではないかという指摘もあります。

 

以上を考慮すると、最高裁判例の論理は、実態に即していない、古色蒼然とした「公共放送の理念」を前提としているという見方もあります。しかし、上述したように、最高裁判所は「法の解釈・適用」という司法権の役割を誠実に果たしただけともいえます。

 

また、他方で、多チャンネル化・IT化が高度に進んだ結果、誤った情報が瞬時に多くの人に無批判に広まるなどの危険性が増大しており、だからこそ、高度に「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」を保障された公共放送の存在意義がより高まっているとの見方もあります。

 

いずれにせよ、放送法におけるNHKおよび受信料の位置づけについて、国会(立法府)、政府(行政府)が再検討を加えるべき時期がきているといえそうです。

 

 

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