(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省より『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』が発表された。多くの人が不安を感じている年金額だが、その数字の移り変わりから、現状と今後の展望を探る。

厚生年金と国民年金、最新の平均受給額

『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』(厚生労働省)が発表され、公的年金の最新事情が明らかとなった。

 

それによると、2021年の厚生年金受給者の平均年金受給額は老齢厚生年金で月額14万5,665円、国民年金受給者の平均年金受給額は老齢年金(加入25年以上)で月額5万6,479円だった。

 

2011年の平均受給額は、厚生年金が15万2,396円、国民年金が5万4,682円となっており、単純にこの10年を比較すると、厚生年金は減額でも、国民年金は増額しているようにみえる。だが、国民年金の満額時の受給額は、2021年度が年78万900円、2011年度が年78万8,900円で、国民金の受給額も減額傾向だといえる。

 

2021年度の年金受給額を年齢別にみると、厚生年金、国民年金のいずれも、65歳以前を境に平均受取額が増えている。これは繰り上げ受給の影響だ。また厚生年金は、70代は平均14万円台、80代前半は平均15万円台、80代後半以降は平均16万円台と、平均受取額は上昇傾向だが、これは法改正の影響によるものと想定される。

 

年齢別「年金受給額」

 

◆厚生年金

60歳:87,233円

65歳:145,372円

70歳:141,026円

75歳:145,127円

80歳:154,133円

85歳:161,095円

90歳以上:160,460円


◆国民年金

60歳:38,945円

65歳:58,078円

70歳:57,405円

75歳:56,643円

80歳:55,483円

85歳:56,404円

90歳以上:51,382円


出所:『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』(厚生労働省)

 

厚生年金の受取額の分布において、年金月20万円以上は全体の15%と、6~7人に1人の割合だ。一方、年金15万円以下は全体の54%程度、月10万円に満たないのは全体の23%でほぼ4人に1人、月5万円未満は2.5%と、これは50人に1人となっている。年金受取額においても、大きな格差があることが見て取れる。

20年で受給総額は15兆円もの増加

20年前の2001年の年金の受給総額40兆7,840億円だった。だがその後、2007年には高齢化率が21%を超え、日本は「超高齢社会」へ。2021年、受給総額56兆0,674億円。この20年で受給総額は15兆円もの増加だ。

 

日本の公的年金は、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する、いわゆる「賦課(ふか)方式」だが、少子高齢化が進展すれば、当然保険料は減少し、制度の維持は難しくなる。そのため、年金積立金により不足を補うかたちをとっている。

 

この年金積立金は、現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかったものであり、これを年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用している。

 

2022年7~9月期は1兆7220億円の赤字となったが、運用事態はそれなりに堅調であり、制度の崩壊の心配はなさそうだ。

 

ただし、年金支給額の現状維持が確約されているわけではなく、「制度が維持できる」という意味に過ぎない。

 

急激なインフレに苦しむ年金生活者が増えるなか、現行の年金制度の見直しも検討されているが、年金増額の望みはほぼゼロではないか。現役世代の負担も、今後はさらに増加するだろう。こうなったら、年金に頼らない生活設計を自ら行っていくしかない。

 

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