「一人社長」でも加入できる「企業型DC」とは
企業型DCは、企業がメンバー(従業員・役員)のために掛金を毎月支払い、対象者個人がみずから年金資金の運用を行う制度です。かつては「401K」と呼ばれたことがあり、そちらのほうがピンとくるという方も多いかもしれません。
従業員のための福利厚生の制度というイメージがありますが、社長1人だけの「1人法人」でも「厚生年金」に加入していれば、導入することができます。
積み立てたお金の受給権を取得するのは原則として「60歳」ですが、積立期間を最長で「70歳」まで設定することができます。その期間中の運用実績に応じて年金原資が決まります。
企業型DCの「3重の税制メリット」
企業型DCには、「掛金拠出段階」、「運用段階」、「積み立てられたお金を受け取る段階」のそれぞれにおいて税制メリットがあります。以下、説明します。
◆掛金拠出段階
まず、会社が掛金を拠出する段階では、掛金が「福利厚生費」として会社の「損金」となります。もちろん、「給与」ではないので社会保険料もかかりません。
また、個人の側でも、給与ではないので、所得税・住民税が課税されず、社会保険料もかかりません。
なお、個人も掛金をプラスして払い込むことができる「マッチング拠出」という制度があります。この場合、個人が支払った掛金の額は「所得控除」の対象となり、所得税・住民税が非課税となります。ただし、給与のなかから支払うものなので、社会保険料はかかります。
◆運用段階
次に、運用段階では、運用によって得られた利益に所得税・住民税がかかりません。
本来であれば毎年、その年度に発生した運用益に所得税・住民税合計20%が課税されます。しかし、企業型DCにおいては、運用益が発生しても非課税です。しかも、運用益をさらに再投資することにより、複利運用することができます。
なお、年金資産には本来特別法人税がかかりますが、2023年3月末まで凍結される時限措置がとられており、その後も凍結措置が継続される可能性があります(その発表はギリギリになるとみられます)。
◆積み立てられたお金を受け取る段階
積み立てられたお金を受け取る段階では、「年金」と「一時金」のどちらかを選ぶことができ、いずれも他の所得に比べて税負担が軽くなっています。
第一に、「一時金」で受け取る場合は「退職所得」として扱われ、積立の期間に応じて「退職所得控除」を受けることができます。
また、「年金」で受け取る場合は「雑所得」と扱われますが「公的年金等控除」を受けることができます。
このように、企業型DCは、「入口」「途中」「出口」のすべての段階で税制優遇の対象となっているのです。