加入者増加の背景に、「老後の長期化」と「年金不安」
確定拠出年金の加入者は右肩上がりで増えていますが、その背景には何があるのでしょうか。
まず一つ目は、私たちの老後が長期化していることです。
ご覧のように、私たちの平均寿命は年々延びています。
私たちの国の年金制度がスタートしたころ、人々の平均寿命はそれほど長くありませんでした。現役引退後、十数年生きた後に亡くなる人が大半だったのです。
そのため、老後のお金は今の時代ほど重視されておらず、老後の資産を準備しておくことに対して、それほどの危機感はなかったのかもしれません。
しかし、2021年の平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳(2021年、厚生労働省)です。さらに、2050年には男性が84.02年、女性が90.4年まで延びる見込みです。
老後の時間がどんどん長くなっていきます。そんな「人生100年時代」と言われる現在は、老後の生活のためにお金を準備しておく重要性が、以前にも増して高まっています。
さらに、確定拠出年金の注目が高まってきているもう一つの理由は、公的年金に対して不安を感じる人が増えていることが挙げられるでしょう。
2019年に話題になった「老後2,000万円不足」問題が記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
金融の専門家たちが作成したレポートの中に、「公的年金だけでは老後の生活資金が2,000万円足りませんよ」というところがあり、その部分をマスコミがフォーカスして取り上げたために、公的年金に対する不安感が高まりました。
私も日々いろいろな方とお話しする中で、公的年金に対する不安をよく耳にします。
若い人たちの中には、「年金もらえないでしょ」「年金はないものだと思っています」などと言う人もいます。極端な考えですが、そう思ってしまうのも無理のない状況といえます。
公的年金が完全になくなってしまうことはおそらくないかと思いますが、現在の公的年金を取り巻く状況を理解すると、より自助努力によって老後資金を準備しておかなければいけないことは確かです。
なぜかというと、ご存じのように、公的年金の仕組みは「世代間扶養」です。
世代間扶養とは、現在働いている現役世代が納める社会保険料をもとに、年金受給者に対して年金を支給するというものです。「世代と世代の支え合い」によって成り立っています。世代間扶養により年金の支給は終身にわたって続き、物価変動にも対応できる仕組みになっています。
ところが、この世代間扶養は、現役世代と年金受給者の割合がいいバランスを保てているときはいいのですが、それが変わってきたときは状況が厳しくなってきます。