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<ポイント>
●トイレはプライベート空間かつ客用の空間である
●洗面脱衣室と共有させるなら家族用トイレに
●個室のトイレなら客人が使用することも念頭に置こう
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後回しにされがちだが、「トイレの位置」は超重要
住宅の間取りではトイレはさまざまな場所に置かれていますが、その間取りを紐解いていくと、暮らしの考え方が見えてくることがあります。一方で、トイレの位置は毎日の暮らしに大きな影響をおよぼすにも関わらず、無頓着になってしまいがちでもあります。
トイレは、家族にとって究極のプライベートスペースであり、また家族とともに客人も使うスペースである、というふたつの考え方が併存しています。たとえば、トイレに手洗い場を設ける場合、手を洗うスペースを少しだけ大きく取ればパウダールームになり、客人にとって使いやすいトイレとなります。逆に、洗面脱衣室のなかにトイレを置く方法もあり、それを進化させると、一度洗面脱衣室に入り、そこから個室のトイレに入る間取りにもできます。
洗面脱衣室とトイレが絡む場合は家族専用のトイレとして考え、寝室や子ども室の近くに置くことが多いです。そうなると、客人のためのトイレがなくなるので別途トイレが必要となります。さらに2階建てでは各階にひとつずつ、計ふたつのトイレが必要です。
なお、浴室と洗面脱衣室とキッチンをまとめて生活動線の一部にする場合、トイレは完全個室となるので、客人が使うトイレはパウダールームにしてもよいでしょう。
サニタリーを家事動線の一部と割り切ってみる
欧米のホテルに行くと、スリー・イン・ワン形式(浴槽、洗面台、トイレがひとつの空間にある)のサニタリーが当たり前で、個人の住宅でも採用されています。
日本でもこの形式が増えていますが、入浴方法を考えると湿気の問題などがあり、浴室だけが切り離されることも多いです。ここを家族のプライベートな場所と考えるのであれば、家族だけが使うトイレとなります。家族しか使わないならば、そこの扉は普段から開いていても問題にはなりません。扉を開け放しておけば風の抜けはよくなります。
また、洗面脱衣室に洗濯機を置く場合も多く、するとトイレを含む洗面脱衣室は家事スペースにもなり、トイレは家事動線の一部に含まれます。キッチンとユーティリティとサニタリーがまとめて家事動線でつながる、そのことを割り切ることで、間取り全体がよくなることもあります。
キッチンを通ってさりげなくトイレへ
小さな家で、ワンフロアをLDKが占めてしまう場合、そのフロアにトイレを置くかどうか迷うことがあります。こぢんまりしたワンフロアのLDKに、唐突にトイレが置かれるのはやはり気になります。まして、リビングやダイニングからトイレの扉が見え、そこに出入りするさまは、互いに気持ちがよいものではありません。
こうした場合にトイレを置くのに適したパターンのひとつに、キッチン横があります。キッチン廻りには冷蔵庫や収納があり、リビングやダイニングに比べて、背の高いモノで遮られる場所が多いからです。それらの横をすり抜けてトイレに向かう動線を確保すると、リビングとダイニングからは視線が遮られる場所にトイレの扉を配置することが可能となります。
【⇒画像一覧:キッチンを通ってさりげなくトイレへ etc.】
本間 至
一級建築士
1956年東京生まれ。一級建築士。1979年日本大学理工学部建築学科卒業。卒業後、1986年まで林寛治設計事務所で実務を通し住宅設計を学ぶ。独立後、東京で設計事務所本間至/ブライシュティフト(一級建築士事務所)を設立し、今までに150軒以上の住宅の設計を手掛け、暮らしやすい間取りをつくる住宅設計者として高い評価を得ている。
主な著書に、『最高の住宅をデザインする方法』『最高に楽しい[間取り]の図鑑』『本間至のデザインノート』『いつまでも快適に暮らす住まいのセオリー101』『小さな家の間取り解剖図鑑』(すべてエクスナレッジ刊)などがある。