(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事では「富裕層の海外資産と税務調査」について解説します。国税庁の富裕層に対する引き締めはいまにはじまったことではないですが、引き続き富裕層をターゲットにした税制改正が矢継ぎ早に発表されており、今後も国税庁の富裕層包囲網は継続されるようです。2021事務年度の所得税などの調査結果が国税庁より発表されました。その調査結果から、国税庁の富裕層に対する調査傾向が見えてきます。

「追徴課税を課せられた富裕層」の共通点

今回の調査結果から見る国税庁の調査傾向には、ひとつの特徴があります。税務調査及び追徴課税を課せられた富裕層の共通点は「国外財産」を所有している点であった、ということです。

 

富裕層に対する税務調査の結果、1件あたりの申告漏れ所得金額は3,767万円、申告漏れ所得金額の総額は839億円に上りました。つまり2,000人以上の富裕層に税務調査が入ったことがわかります。これは、富裕層対象の統計を始めた09年度以降で最高の額です。

 

また、1件当たりの追徴税額は2,953万円で、所得税の調査全体の追徴額323万円の9.1倍にもなります。

 

国税庁はいままで野放し気味だった海外資産に照準を当て、海外へ財産の流出を防ごうとする狙いがあるようです。つまり、これからも「国外資産」に関する税務調査は急増し続けるということです。

 

こうなると海外資産を所有していただけで狙い撃ちで税務調査を受けることになり、富裕層による海外資産への投資は目減りしていく可能性が高くなってしまいます。とはいえ、投資をするのであれば日本国内だけで投資するのは限界があり、海外資産を厄介者扱いするのはお門が違います。

「海外資産」と「日本の国税庁」の関係

昔なら隠せた海外資産ですが、いまではOECDのCRSにより、国税庁はいとも簡単に海外資産を把握することができます。コロナ禍でなかなか実地調査ができない間、国税庁は血眼になってCRS情報の精査に時間を掛け、税務調査のターゲットを絞り人員と工数を掛けることにより、海外資産に関わる申告漏れ所得を追求することができたワケです。

 

また、5,000万円を超える海外資産を所有している場合、確定申告に合わせて「国外財産調書」の提出を求めています。過去の税制改正では「国外財産調書」の罰則が強化されています。

 

つまり、国外財産調書の情報をもとにCRS情報を精査し、税務調査のターゲットを絞っているということがわかります。

 

海外資産の確定申告は、日本国内のみの確定申告よりも煩雑になりがちです。

 

例えば株式の譲渡所得だけでも、株式自体の譲渡所得と為替益による雑所得を申告しなければなりません。また、そのときの為替レートはいつの為替レートを適応するかも判断しなければなりません。

 

不動産などの現物資産でも同様の申告が必要になります。つまり、海外の金融商品や現物資産が増えれば増えるほど、確定申告は煩雑になり、投資をしている国が増えれば増えるほど難解となっていくのです。

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