(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今の相次ぐ物価上昇は一向に収まる気配がありません。そんななか、重要性を増しているのが「値上げして、適正な価格で販売すること」です。本連載では「感性と行動の科学」に基づいたビジネス理論を研究するオラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏が、著書「『価格上昇』時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか」から、適正な「値上げ」をして、かつ売上を高める「戦略」について解説します。

たった2粒のあられの価格が10万円!?

この項の最後に「究極のパッケージ化」の例を紹介したい。

 

先ほど「チョコレートあられ」の事例をお伝えした京西陣菓匠宗禅が製造・販売している献上菓子「黄金亀」だ。

 

宗禅の社長の山本氏は、日本唯一の「上技物」のあられを作ることのできる職人であり、これまで順調に売上を増やしてきた。

 

そんな宗禅が発売したこの究極のあられの価格はなんと、「2粒で10万円」。先ほどの親指サイズのチョコレートあられの「1粒200円」も破格だが、「2粒10万円」となると、もう異次元だ。

 

この黄金亀というあられはカメの形をした大粒のあられで、なんと、金箔に包まれている。

 

まず、このカメの形のあられだが、一つ作るのに10日もかかる。これ自体がすごい技術なのだが、そうしてでき上がった1000個ものあられの中から究極の2粒を選ぶのだという。

 

そして、それに金箔を貼るのだが、これを作るために山本氏は金箔師のところに弟子入りし、金箔の技術を身に付けた。

 

さらに清水焼の器に、その亀の形をしたあられが1匹ずつ入れられている。そして手染めの友禅紙に包まれ、加賀塗の漆器に収められ、さらに西陣織の巾着の中へ。奈良の職人が作った桐箱の中に入れられ、縮緬(ちりめん)の風呂敷に包まれて提供される。これはまさに、日本文化、職人技術の粋を幾重にも重ねた、究極のパッケージ化だ。

 

最高級品とはいえ、実質的には「あられ2粒」。それがパッケージ化されることで、なんと10万円の価格が付くのである。

 

そんな価格であるにもかかわらず、発売以来、お祝いニーズなどとして重宝されている。海外からも引き合いが来るそうだ。

 

あなたの扱う商品も、パッケージ化によって価値を高めることができないか。ぜひ、考えてみてほしい。

 

 

小阪 裕司

オラクルひと・しくみ研究所

代表

 

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「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか

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