パッケージ化による付加価値が価格を上げる一助となる
もう一つのパッケージ化の事例として、「西島眼鏡店」の取り組みをご紹介したい。
この店では、やはりコロナで店に来られないお客さんに対し、眼鏡のプロである西島達志氏が眼鏡を見立ててお届けするという新しいサービスにチャレンジした。その名も「お任せ見立て、ワクワク宅配便」。
このサービスを頼んだ人の家に届けられるのは、同店をイメージした家の形をしたユニークな箱だ。中を開けると、眼鏡だけでなくさまざまなものが詰め込まれている。「なぜ、その眼鏡を選んだのか」について西島氏自身が語るメッセージはもちろん、お店の近くの「老舗マップ」、さらには、西島眼鏡店のキャラクターの塗り絵や、奥様特製のキャラクターのアクセサリーまで入っている。
ティナズダイニングの事例も西島眼鏡店の事例も、「お店に来られない人が、まるでお店に来たときのように感じてもらう」という価値まで含めてパッケージ化されている。
言うまでもないことだが、こうすることで単に食材や眼鏡を販売するときよりも、高い価格を付けることができる。これがパッケージ化の効能だ。
既存のものを「意味」でくくり直す
ちなみにこういう例を挙げると、「パッケージ化」とは通信販売で送る箱の中身にいろいろと詰め合わせることのように誤解されるかもしれないが、そうではない。
福島県いわき市の「渡辺文具店・パピルス」には、毎年春の入学シーズンになると、小学校入学用品を準備する親御さんたちが多くやって来る。学校側は何を準備すべきかを事細かに説明はしないので、必要なものは何か、名入れはどうやるのかなど、毎年お客さんからさまざまな質問を受ける。入学準備の中でも特に名入れは大変なため、徹夜で入学式当日には目の下にくまが……などということも珍しくないそうだ。
そこで同店は、「小学校入学用品チェック表」なるものをオリジナルで作成。そして、それぞれの用品について、どのように名入れをするか、そのためにはどのようなツールやサービスがあるかを列記。SNSでは、それら名入れツールをまとめて写真を撮り、「名入れツール見本」として発信した。
とはいえ、そこに映っているものは、特別なものではない。オフィスでもよく見る「テプラ」やサインペンなどである。ただ、それをパピルスは「小学校入学前の名入れにとても便利なツール」という「意味」でくくり直した。こうして「意味」でくくられることで、お客さんもそれらの「意味」がわかる。
たとえば、これらが「名入れツールセット」としてパックされて売られ、それをお客さんが丸ごと買えば、あるいは手元になかったものだけ足して買えば、それは「価値のパッケージ」を買ったことになる。
これもまた「パッケージ化」である。
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