(※写真はイメージです/PIXTA)

「業務スーパー」は、どこも真似できない商品のラインナップと驚くほどの低価格で注目を浴びており、物価高が深刻化するなか、小売業界における存在感をますます大きくしてきています。いったいどのような経営が行われているのでしょうか? 本連載では小売り・流通関係に精通しているジャーナリストの加藤鉱氏が、著書『非常識経営 業務スーパー大躍進のヒミツ』から、業務スーパーの型破りな経営戦略について解説します。

ロイヤリティは仕入れ額のわずか1%

その点で業務スーパーの場合、オーナーとフランチャイズ本部とが揉(も)めるようなことは基本的には少ない。営業時間に関しては地域ごとの特性に合わせており、基本的には申請許可制で、店舗ごとに決めている。

 

業務スーパーのFCに加盟しようかどうか迷っていた人が「あなたはさまざまなフランチャイズの業態があるなかで、なぜ業務スーパーに決めたのですか?」とある加盟店オーナーに尋ねた。するとそのオーナーはこう返してきた。「一つには商品力です。神戸物産からしか仕入れられない商品があるからです。もう一つは、自由度が高いからです」

 

そうした質問を受けていたオーナーは酒類販売店(それにしても私が取材したオーナーには酒類販売に携わる人が多かった)を経営している人だった。「いままで扱っていた酒類を業務スーパーの横で一緒に売ることができる。自分たちの強みを活かしつつ、そこに業務スーパーの魅力を加えて、店として運営していける。その自由度の高さが気に入ったのです」

 

前出の花房課長が言った。

 

「当然ながら業務スーパーのフランチャイジーになるからには、神戸物産と加盟店との約束事として、ある程度の商品を扱うことや、これはイチオシ商品なので力を入れてくださいとか、本部からの案内や指導はしています」

 

それぞれの加盟店の特徴を活かせる経営ができるのが、業務スーパーの人気の秘密ともいえる。フランチャイズのなかではきわめて珍しい存在だし、箸(はし)の上げ下げから指導するコンビニチェーンなどから見れば、非常識きわまるFC経営法かもしれない。だが、実際にはそこに魅力を感じている加盟店オーナーは多い。

 

さらに非常識なのは、FC本部の神戸物産に支払うロイヤリティが「仕入れ額の1%」と信じられないほど安いことである。ロイヤリティとはフランチャイズ契約の加盟店が、本部が提供する商標や経営ノウハウ、技術サポートなどに対して支払う使用料のことを意味する。

 

博和社長はロイヤリティの安さについて訊かれると、いつも平然としてこう返している。

 

「加盟店料で儲けようとは思っていない。うちはあくまで製造と卸で稼ぎますから」と。

次ページコンビニで起きている加盟店への理不尽な要求
非常識経営 業務スーパー大躍進のヒミツ

非常識経営 業務スーパー大躍進のヒミツ

加藤 鉱

ビジネス社

ロイヤリティがなんと破格の1%!? なぜこの値段? なぜ牛乳パックに羊羹? なぜ急拡大? 毎日が型破りな業務スーパーが大人気な理由 売上高3,408億円、営業利益236億円、8期連続の増収増益、(2020年10月期決算)! あ…

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