「業務スーパー」はなぜ物価高でも変わらず「安い」のか? 創業者が語る秘密 (※写真はイメージです/PIXTA)

「業務スーパー」は、どこも真似できない商品のラインナップと驚くほどの低価格で注目を浴びており、物価高が深刻化するなか、小売業界における存在感をますます大きくしてきています。いったいどのような経営が行われているのでしょうか? 本連載では小売り・流通関係に精通しているジャーナリストの加藤鉱氏が、著書『非常識経営 業務スーパー大躍進のヒミツ』から、業務スーパーの型破りな経営戦略について解説します。

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徹底的に無駄を排除した「盾の経営」

業務スーパーの店舗コンセプトは実にシンプルだ。ロス・無駄・非効率を徹底的に排除する。商品構成もその考えが基本となっており、決してブレることはない。

 

店内の輸入品陳列風景
[図表1]店内の輸入品陳列風景

 

商品陳列には一切、見栄を張らない。常温食品についてはパレットに商品を積むウォルマート・スタイルをさらに上回る、段ボールに入ったままで売るいわゆる「箱陳」(ハコチン)が業務スーパー流。

 

いったん売場に出した商品はバックヤード(倉庫)には戻さない。エブリデイロープライスなので、年に数回のほかは特売広告は出さない。できるかぎり従業員の作業量をセーブする意味合いもあるが、一番の狙いは販売管理費の圧縮だ。

 

徹底した無駄の排除により、ウォルマートの販管費率16%を下回る14%を実現している。すべては業者が使う商品を1円でも安く利用客に提供するためである。ちなみに日本の食品スーパー大手(ヤオコー、ライフコーポレーションなど)の販管費は25~30%といわれている。

 

業務スーパーを展開する神戸物産の創業者、沼田昭二はこう語った。

 

「私は『盾の経営』をやろうとしたのです。『盾と鉾(ほこ)』の盾です。人口がどんどん減っていき、高齢化社会になり、一人あたりが食べる量が減る時代に変化を遂げた。そんな変化が起きているのに、これまでどおりに広告をどんどん打って攻めていく『鉾の経営』は時代にそぐわないでしょう。『盾の経営』で力をつけるためにすることは、とにかく初期投資を抑えていくことでした。

 

私はSPA(製造小売業)のみならず、製造販売の世界においては、『技術と頭脳の勝負』だと考えています。やはりバイイングパワーが上がってくれば、仕入れ力がつくので必ず利益は上がるし、それは当然で有難いことであり、すべきことなのです。しかし、本当に『盾の経営』をしようと思えば、やはり他社にできない技術と頭脳は必要不可欠なのです。

 

だから、毎日勉強していますし、いくつかの特許申請に至ったものもあります。私の特許の面白いところは、あらゆる添加物が入っていないことです。空気中にあるもの、人間の体にあるものだけで活性オゾンも活性塩素も作っている。これがないと、神戸物産のオンリーワンの加工はできません。

 

この特許はブラックボックスで、すべてをオープンにはしていません。ただ、他社に真似されたら困るのでそこのポイントだけは特許を取っておこうということです」

 

2000年の開業当初は店に訪れる業者と一般客の来店数シェアは半々であった。ところが、次第に一般客が増えてきて現在に至っては一般客が9割を占める。大家族の需要というニッチを狙ったのだが、予想外に核家族にも受け入れられたのだ。

 

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    作家・ジャーナリスト

    愛知県豊橋市生まれ。立教大法学部卒。雑誌記者を経て香港に渡り、在住10年。1992年に香港で日本語オピニオン紙「サイノエイジア・ファックスライン」を創刊し主筆を務め、中国への返還という歴史的な過渡期を迎える香港をレポートした。その後活動拠点を東京に移し、特に小売り、流通関係に精通し、立教大学大学院兼任講師などを務める。96年、『香港返還で何が起きるか』(ダイヤモンド社)で作家デビュー。主な著書に『大班』(集英社)、『チャイニーズリスク』(講談社)、『ヤオハン無邪気な失敗』(日本経済新聞出版)、『再生したる!』『旧社名に未練なし』『中国ホンダ経営会議』『伝えるしごと』(以上ビジネス社)など多数。

    著者紹介

    連載非常識経営 「業務スーパー」大躍進のヒミツ

    非常識経営 業務スーパー大躍進のヒミツ

    非常識経営 業務スーパー大躍進のヒミツ

    加藤 鉱

    ビジネス社

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