調理の時短ができるというメリット
花房課長が回顧のまなざしでこう語った。
「これから時代はどう変わっていくのか。 創業者は先を見据えて考える人物でした。少子高齢化が進んでいき、共稼ぎ家庭が増加、家庭で料理をする人が減ってきたときに、われわれはどう生き残るのかと。
創業者ご自身が食品スーパー『フレッシュ石守』を経営されていたので、昔のように台所に長い時間立って、手間をかけて、家庭料理を出す家が減少するのは必至と肌で感じていたはずです。料理人の経験から何が手間かはわかっていたし、フレッシュ石守の商売のなかで生鮮品の扱いについても、ロスが出るから大変だということも理解されていた。
したがって、そうしたものを省いていく。商品構成もロスが出ないような日持ちのするもので、手間のかからない時短のものを売れば受ける。これは一般消費者もそういう方向にシフトしていくだろうし、加えて飲食店をやっていると人件費が発生する。調理時間を減らせれば、店のコストも減らせますよね。
創業者はそうした目線で商品開発をしてきたし、業務スーパーというオペレーション自体も、自分が食品スーパーをやっていた経験から、何を省けばより簡単に埋め合わせができるのか。おそらくそうした課題を汲み上げて、さまざまな商品を作っていかれた」
時短商品で他社との差別化を図る。しかもボリュームがあって、なおかつ価格が安ければ確実に売れる。創業者の読みは見事に的中した。
業務スーパーほど調理の時短ができる商品が揃っている店は見当たらない。業務スーパーは忙しい主婦には欠かせないインフラとなっている。
加藤 鉱
作家・ジャーナリスト